今年に入ってからも、昨年以上の社債発行ニーズが高まっているようです。しかし、その内容は昨年の金融危機とは少し異なってきました。昨年の金融危機の時は、機関投資家の社債投資熱は冷え込み、金融機関の貸し渋り、貸しはがしが横行し、企業は安定資金を調達するために四苦八苦していました。結果、低金利でのどの渇いた個人投資家向けに社債発行に踏み切り、社債発行を成功させるために「個人が興味を持ってもらえる条件はどこにあるのか」と真剣なマーケティングを行いながら個人投資家のニーズに気を配っていました。

 しかし、最近の発行は、金融危機が後退し、破綻リスクに対する不安が治まってくるにつれて、投資家にリスクを取る余裕が少しずつ戻ってきて、運用に困っていた、悩んでいた投資家が円の確定金利もので、しかも、そこそこの金利水準を保っていた社債を求めに行った結果、企業側が「こんな条件でも良かったら社債を発行してあげるよ」というスタンスに変わってきました。
 つまり昨年は「企業→投資家」であったのが、今年は「投資家→企業」にベクトルが変わってしまいました。こうなると、みるみる条件は投資家よりではなくなっていきます。
 インターネット専業金融機関のネット定期がこの1年間で大きく伸びたという報告もありました。やはり、金融危機で投資に臆病になった資金、株高・円安等の相場に機敏に対応することは無理とあきらめてしまった資金が相当流れているようです。ソニー銀行のコメントでは、余りに集まりすぎたので、「集まった資金を運用だけではなく、新たな融資先を開拓しなければならない」と困るほどの様子。当然、金利はお金の価値ですから、困るぐらい資金が集まってくるようなことが続けば、金利は下がる方向に入るのは必然です。
 金融危機から1年が経ち、こうした社債で調達することに不安がなくなり、金融機関が高い金利を出して定期預金を調達していく意味を考えざるを得ない「金融緩和」による金余りが実感されることが、ここ、そこに見えてくると、安全資産を求めた資金から次第に「少しリスクを取って投資する資金」に変わっていくものが増えてくると思います。
 今までお金を取りまくっていたところが、逆に金余りで運用せざるを得なくなる。これも、相場が妥当から行き過ぎに向かうエンジンになります。そう考えると、しみ出すように株高・円安へと向かう動きは不自然な、不可解な動きだと私は思いません。