投資相談を受けていると「今、何に投資したらいいんでしょうか?」という質問をよく受けます。

「今日の晩ご飯は何にしたらよいのでしょうか?」 「じゃーカレーで・・・」
そういう答えを期待しているのでしょうか?
うちの家内のように、「それはないなあ」と結局、ただ私に聞くだけの相談者であれば、それなりに役に立っているのでしょうが・・。
 たいていの人が投資で悩むことになるのは、自分の目的に合わない金融商品を選択し、その値動きに自分を無理して合わせて窮屈な思いをしているからです。
「こんなに値動きが大きいものとは知らなかった」「こんなに値動きが小さく、退屈な物だとは思わなかった」などなど。
 つまり「どんなことを不安に思っているのか」→「その不安を解消するためにどんな選択肢があるのか」→「もし投資でその不安を解消できるならどんな手段があるのか」の経過があって、その中で「何に投資したらいいんでしょうか?」という質問になるのが本来だと思います。
ここまでの過程を相談者と一緒に考えていくのが我々アドバイザーの大きな役割だと考えています。
 本じつのニッケイ記事に「公的年金 シン興国株にも投資」という記事がありました。公的年金の積立金を運用する年金積立金管理運用独立行セイ法人(GPIF)が、中国、インドなどシン興国市場に上場する企業の株式に投資対象を拡大するホウ針を固めたとのこと。現在は原則として約20カ国の先進国の企業に限定している。
 この記事を見て「変」と思いました。「何に運用するか」を運用のプロに指図するのはおかしいと思いました。
プロには「こういう目的のお金だから、こんな運用をして頂きたい」と運用目的を伝え、その実現のために知恵を絞ってもらうものではないでしょうか?その目的を受けて、結果責任を問われるのがプロではないでしょうか?
 目的はどうも「20年度以降の運用利回りは年4.1%」。なぜ年4.1%かと言うと、これにより、厚生年金の標準的な受給額は現役世代の収入の約50%になるから・・・ということらしい。
 そして現在の投資内訳は67%近くが国内債券。国内株式が11%、外国株式が9%、外国債券が8%、短期資産が5%。
国内債券の期待リターンはどうでしょうか?今年1年の期待リターンはせいぜい1%。3年間でもせいぜい1%。
 67%を占める国内債券の期待リターンが年1%なら、その他の33%の運用でどれだけ頑張ったら、資産全体で年4.1%に回るのか?ざっと計算すると、年10%超のリターンが必要。今年のように行って来いのボックス相場だったり、逆に円安や株高ではない相場展開になれば、全然年4.1%の目標にはほど遠く、円安・株高を前提に考えないと達成は不可能のように私は思います。その打開策がシン興国株式の組入れで、そうすることで実現可能になるのでしょうか?
 むしろ、「現在の投資環境で年4.1%の目標設定自体に問題はないのか?」。
 現在の投資割合で、長期的に年4.1%のリターンを達成できるとする前提に疑問を感じます。相場に助けられた時だけ達成し、それ以外は未達で「残念な結果でした」と公表するだけ。それでも、結果責任を問われることはない。しかし運用者の立場で言えば、「こんなに運用に縛りがあり、こんなポートフォリオの内訳で今年を任せると言われても、やれることは限られており、相場に助けられて達成できることを願うだけ。結果責任と言われても困る。誰がやっても同じ事」が本音ではないでしょうか?
 債券バブルと言われている現在、117兆円の大きな投資金額の67%も国内債券を組み入れている状況は適正なのでしょうか?67%の国内債券が金利変動リスクを恐れて短期債券に集中投資をすれば、年1%はおろかゼロ金利での運用が確定され、短期資産を除く28%のリスク資産に過大な期待を寄せないと年4.1%の達成は困難になります。
 やはり「年4.1%の継続したリターン」の設定を見直すか、もしそこが譲れないなら年金者に「大きく年金資産を減らす可能性はあるけど、もっと積極的な運用が必要です。現状の低金利を前提にすると、年4.1%のリターン獲得のお約束は困難です」と説明すべきだと思います。
 私であれば「年4.1%でもなんとかなるさあ」で年金者の信託を受け、平気な顔をしている図太さはありません。