私が証券会社に入社し、最初にお客さんになってもらった人の言葉は今も忘れません。新聞の株価欄を指して「前川さん、私はここにある株は全部持ったことがあるよ」と。「えー、この人はどんな金持ちなのか」とびっくりしたことを覚えています。
 お客さんが株式投資を始めたころは、株式を1株単位で購入できました。つまり当時とお金の価値は違いますが、100円もあれば株式が買えたそうです。これぐらいの金額であれば、気張らずに株式投資にも取り組めますし、1000円で買ったものが2割上下したところで200円の損益ですから、冷静さを失うこともないでしょう。株式投資を体験し、勉強するには恵まれた環境だったと思います。
 日興コーディアル証券では株式を1万円単位で売買ができるように考えているようです。システムの負担など、採算が合うかどうか分からないですが、これまで株式投資に興味はあったが躊躇していた投資家にとっては良い話ではないでしょうか。
 株式投資に対する敷居を低くしようと、信用取引ができる条件を緩和したり、金利を低くしたり、手数料を大幅に割り引いたりする証券会社のやり方は、投資家に対するリスクを認知させるという視点を欠いた行為であり、少し感覚がずれているように思っていた私にとっては、「これもありかな」と感じました。