先日、個人向け復興国債の取材で財務省の担当者とお会いしました。金利上昇がプラスになる変動金利型個人向け10年国債が2003年に誕生した時に、「国債を機関投資家にこれ以上買ってもらうのが難しくなったから、個人に押し付けてきた」という財務省陰謀説がささやかれ、当時コマーシャルで「これっていいかも」という流行っていたフレーズをもじって、「個人っていい鴨?」というフレーズが裏でささやかれていました。このように、財務省のやることには裏があるという見方はその後も絶えません。

 個人的には、「機関投資家が国債を買えなくなる事態、さらに機関投資家が国債を売る事態を想定して、個人向けに国債を買ってもらう手段を検討するのはリスク管理上、当然の手段。むしろ、国策で個人に何かを買ってもらおうとする時は有利な条件が多く、個人にとっても検討の価値大」と考えていましたので、当時から私は「個人向け国債」は個人にとって知って損にならない金融商品だと思っています。
 こちらからの質問に答えてもらう形で取材が進みましたが、終始一貫、誠実に答えてくれました。できるだけわかりやすく、この場でなんとか個人向け復興国債の趣旨を理解してもらおうという姿勢でした。
 「金貨、銀貨がもらえる個人向け復興応援国債は、おまけである金貨、銀貨に関心が向きすぎて、金貨、銀貨の取得目的の間違ったリードになる懸念はありませんか」と聞きましたが、「あくまでも低金利で我慢して復興を応援してくれたお礼であり、それを目当てにした投資家がいるとは思えません。また、そういう売り方が、買い方がもしあったにしても、それは私どもではどうしようもないことで・・・(私の意訳)」と金貨、銀貨の取得を強調した販売窓口と個人投資家とのやりとりがあるなんてことが信じられないという風でした。
 また、こんなこともおっしゃっていました。「商品の仕組み上、変動金利型は市場金利が上昇すると、高い固定金利の債券などに乗り換える個人も増えると思いますが、そのリスクについてはどう受け止めてますか?」と聞くと、「市場金利上昇で上昇した固定金利型債券と変動金利型債券の価値はイコールだから売買が成立するので、どちらが得だと言うことではないと思います。もし金利が上昇して変動金利型を売却する人が出てきても、そのリスクは想定内です。ただし、一般的に、金利が上昇している時に変動金利型を売る行動はないと思います」と答えてくれました。
 私は財務省の方は個人の行動があまり理解できていないのだなあと思いました。個人向けの販売では、相当意識しない限り、メリットしか耳に残らないやりとりになってしまいます。販売側は「リスク、デメリットの説明はちゃんとした」と言うし、「メリットばかりが強調されていて、デメリットについてはほとんど聞いていない」とトラブルになります。
 個人は自分で売りの判断を行うのは苦手ですが、売りに迷っている時に人から勧められると行動に移しやすくなります。「金利上昇している時に変動金利型はうらない」という頑とした人よりも、「こちらに乗り換えたほうが良い」と勧められて動く人のほうが圧倒的に多いのです。
 財務省で個人相手のマーケティングをするなら、合理的な行動を行う人たちの助言だけでは無く、販売現場に近い人の声、個人投資家の声を意識してもっと取り込む努力が必要だなと思いました。ご本人達も、販売窓口の金融機関の個人向け復興国債への取り組みには温度差があり、直接、個人に復興国債について理解を求める場がないかと悩んでいると嘆いていました。
 売れ筋商品は売りやすい商品。顧客ニーズに合致した商品が売れているとは限らない。