私が証券会社時代、「優秀な営業マンは電話が短い」と言われていました。私のように電話の長い営業マンは能力なしでした。「商品は人間性で売るもの。クレームになるのは人間関係ができていない証左。優秀な営業マンにクレームはない」とも言われてました。
 「確かに理屈を言って、環境を説明している話しは聞いたことがないなあ。ぼそぼそってささやくような電話をして ありがとうございますゥ と大声で商品を購入してくれたお礼を言っている」。この先輩はすごい呪文でも唱えているのかと不思議に思ったものです。
 昨日、ある商品取引会社の若手社員向けに「金融商品の基礎知識」という内容で話しをしました。みなさん、非常に熱心な態度で話を聞いてくれました。世に言う「証券会社」「不動産」「商品取引」の人間は心を許したら何されるかわからないと不審に思われることが多いのですが、今まで私が出会った大抵の一人ひとりはまじめで熱心で魅力的な人でした。しかし組織になると、競争・ノルマ意識が高まり、暴走してしまうケースが多々あります。
 営業マンの本質は「善」なのですが、組織になると「世間の常識」がわからなくなるのです。「会社の論理」が働きます。しかしながら営業マンの本質は「善」なのです。以前から私は思っているのことなのですが、自分の財産を人に委ねてはいけません。丸投げしてはいけません。営業マンには「何でこれが私に合っているのか」を納得いくまで聞くのが当たり前です。わからない点が見つかれば「もう一度教えてください」と尋ねることが大事です。「私は分からないので、あなたに任せます」は、もし受ける方が誠実であれば重荷になりますし、もし結果が悪くなれば任せた本人も自分を責める結果になるかもしれません。
 投資家がこうした質問を繰り返すことで、営業マンは辻褄を合わせることが困難になり「良心」が戻り、「会社の論理」を引っ込めて「世間の常識」に沿った提案をするようになるのではないでしょうか。世の中が変わるのを待つよりも、そういう営業マンに仕向けていく投資家の「何故これがいいのか」という姿勢が大事だと思います。
 一方で、セールス側は顧客獲得のために、手数料を引き下げたり、ポイント制を導入し、お得感を出すのに躍起になっていますが、投資家が投資に慎重になっているのはお得感が足りないからでしょうか。今こそ、投資家が何に不安になっているのかを対話で確認し吸い上げてあげる環境整備が大事なのだと思います。
 これまでの「必要な情報はすべて用意してあります。ご自由に手に取ってください。そして取引は当社をごひいきに。ただし自己責任ですよ」という対応では傷ついた投資家は投資の中断をせざるを得ません。対話能力が高い対面営業の強化が、セールス側の大きな課題だと思います。私は投資家側の立場で、投資家が何を不安に思い、不満を感じているのかをセールス側に機会があれば伝えています。それがセールス側と投資家の距離を近づけることになるかもしれないからです。みなさんも、理解できないことをそのままにせず、必ず尋ねましょう。自分のためです。