最近、投資信託の手数料、特に儲け、損にかかわらず投資家から徴収される信託報酬の高さを問題視する見方が高まっています。個人的には、手数料の水準の高さではなく、手数料に見合った仕事を期待できるかに焦点を当てるべきで、論点がずれていると私は考えているのですが。
 外債型投信で米国国債など高格付け債だけで運用するものであれば、わざわざ信託報酬がかかる投信の形をとるよりも自分で複数の通貨建ての外国債券を購入した方が良いという考え方もあります。債券は株式のように、頻繁に割高割安のタイミングを狙い売買する性質のものではなく、いったん組み入れたら、満期まで保有するものが大半であるため、組み入れ後の手入れの負担は圧倒的に少ないものです。しかし、いざ外債型投信と同じことをやろうと思っても、証券会社との取引に慣れた人でないと、外国債券を組み込むところから、どこから手をつけて良いのかと、途方に暮れてしまうと思います。
 私がもし証券会社の企画だったら、信託報酬に関心が高い今、絶対品揃えしたらおもしろいだろうなあと考えていたことを、野村證券はボーナスシーズンを控えたこの時期に始めました。これはどこにでもできることではなく、外国債券の販売実績が長く、そして外国債券の販売力がある大手証券会社にしかできません。
 それは米ドル建て、ユーロ建て、豪ドル建ての同じ満期である高格付け外国債券の同時売り出しです。この品揃えにより、投資家は自分の裁量で外債型投信の代わりを組むことが可能になりました。ある人は3分の一ずつに、ある人はユーロは高くなりすぎているから米ドルと豪ドルだけで、などとオーダーメイドで作れます。
 これを自分でやってみて「これって自分には無理」と思った人は、信託報酬を納得して払って外債型投信に任せるか、それとも外債投資自体をあきらめるか、という選択です。この品揃えは、外債型投信の差別化には必要なものです。これがあることで、「こんな実績の外債型投信ならいらない」とか、「この程度の信託報酬でこんなことをしてくれる外債型投信ならお得」とかの評価が感覚、感情ではなく、冷静に比較できる環境が整います。
 野村のこの品揃えが投資家からの評価を得られれば、今後各社も追随してくるのではないでしょうか。すごくいい発想だと思いました。
 ただ一点、「年6回奇数月」利払いというのはやり過ぎではないでしょうか。通常の利払いは年1回か2回。回数を増やせば仕組みが複雑になりコストが余計かかります。売るときに特殊な債券なのでおそらく買い取り価格も通常のものよりも割高になるでしょう。年金支払い月の偶数月をカバーしたいという気持ちはわかりますが、できるだけコストを抑え良い条件で品揃えを行うことをまず考え、ニーズがあれば品揃えとして増やすというやり方のほうが良いと思うのですが。それとも「年金支払い月の偶数月以外をカバーする外国債券」という売り文句がないと販売に自信がないのでしょうか?
 今回は新規発行の債券ですが、これが盛り上がるようであれば、是非自分で満期日まで自由に選べる、すでに発行された既発債券の品揃えを充実してもらいたいと思います。