私は2005年の後半から新興国株式への投資や、リートへの投資に消極的な、慎重な見方をしていました。敢えて投資に取り組む人に対しては「途中で売却して利益を出す自信がある人が投資する難しい対象ですよ」と、注意喚起をしています。出来ればブームに乗り遅れたと焦って飛びつかず、「急落し人の噂にも上らないときに、長期投資で考えられたらいいですね」と言ってきました。結果論で言えば、私の言うことに沿ってきた人は大きな収益チャンスを逃したことになります。ごめんなさい。だけど、今でもこの考え方に変わりはありません。ここで5割上昇する機会を逃したかも知れませんが、この先倍以上の成果を手にすることが出来るかも知れません。多くの人は一時良いときがあってもそこでは売れず、急落場面を迎えるとますます売れず、結局益の大半を吐きだし、投資する気力を無くしてしまいます。本当はそのときが投資再開のチャンスになります。私の主旨に沿って投資対象の急落場面をじっと眺めてきた人が、そのチャンスをものに出来たらと願っています。したがって急落場面でも冷静に自分の判断が出来る人であれば、次回のチャンスの準備も可能でしょうから投資に問題はないでしょう。しかし、それが出来る人は本当に限られた人ではないでしょうか。
 ユナイテッドワールド証券ではタイ株の取り扱いを開始したそうです。先日も書きましたが、タイ株について我々はどんな情報を持っているのでしょうか。タイの個別企業の情報を確かな情報として信じて良いのでしょうか。こういう目新しい、リスキーな投資対象を取り扱うときは、販売会社も投資家も十分な認識が必要だと思います。
 新興株式であるが故に買われた株式のひとつに「オーエイチティ」という株式があります。この1月150万円前後だった株価がほぼ10分の一まで急落しています。新聞報道によると、藍沢証券の顧客が信用取引でこの株式を取り扱い、大損して、追い証が負担できず、10億円を超える立替金が発生し、しかも回収不能になるかも知れないとありました。
 損をしたのは投資家の自己責任ですが、受け付けた藍沢証券は仲介しただけで責任がなかったとは言えないでしょう。
 以前私が勤めていた大和証券では、金利の高い豪州国債を取り扱いたいというニーズがありましたが、当時シドニーの事務所では顧客が投資判断を行うために必要な情報を提供する能力が整備されておらず、時期尚早でやむなく取り扱いを見送りました。投資判断に足る情報提供が可能であるかは金融商品を扱う最低限の条件だと私は思うのですが。
 「売れる」という顧客ニーズが優先されて、品揃えを広げることの優先順位が高いような気がします。もし事が起これば、今回のコムスンのように、サービス提供側の存続に関わる話になりかねません。リスクの認知が甘くなっているようであれば、注意が必要です。