FRBが思い切ったFFレート0.5%の引き下げを決定したその後、上がりはしたものの息切れ気味の株価と、更に上値をうかがう原油、金などの商品価格。金融、信用の収縮に投資は及び腰である一方で、しみ出したお金が資源確保の動きを先取りする。中央銀行にとっては緊急事態とはいえ、一番抑え込みたい投機マネーを野放しにするしかない状況になってしまっているのは忸怩(じくじ)たる思いだと思う。そんな気持ちを逆なでするように、資源価格の高値更新がインフレ懸念を増長させる。
 米国10年国債利回りは一時4.3%まで低下しましたが、決定後は反転し4.7%程度まで上昇。今回引き下げられたFFレート4.75%の水準を前提にすれば妥当近辺に戻ったと私は考えています。できれば5%近辺までの上昇を期待したいものです。国内10年国債利回りも一時1.635%まで上昇、こちらも妥当水準ではないでしょうか。
 為替は政策金利を下げてしまい、更に下げ余地を示唆する米国と、上げることはないかも知れないが下げるとは言っていないユーロとの関係で、ユーロは高止まり、それ以外の通貨の水準は高いの、安いのと目くじらを立てるほど明確な割高、割安ではないと思います。株価の水準もしかり。
 いわゆるつまらない居所に収まってしまった感があります。相場は妥当水準で長くとどまることはありません。妥当水準に長くとどまっている期間が長いほど相場のエネルギーが溜まり、割安、割高の方向に大きく振れる機会があるものです。
 今回米系証券会社の決算発表でサブプライム問題が業績にどの程度影響を与えたかが注目されましたが、概ね予想の範囲内でサプライズはありませんでした。米系証券会社に大きな損害がなかったということは、逆に彼らの持っていたリスクは既に、いろいろな投資家に押し付けてしまった後ではないかと私は疑っています。つまり広く投資家にリスク・被害が拡散していて、その投資家は現実の損害が現在算定できずにいる状態にあり、いつか突然損が実現する「時限爆弾」を抱えているようなものという認識です。
 いつ、どこで、どんな投資家で発生するかわからないのでは、中央銀行も事前に備えることができません。したがって「万一の時には潤沢な資金提供を行う準備はしているよ」と何度も市場に訴えているのでしょう。こんな状況では、金利引き上げの姿勢を収めていない欧州中央銀行も引き上げは当面できないでしょうし、再度欧州内の金融機関でも破綻リスクが顕在化すれば、米国同様引き下げに踏み切らざるを得ない状況もあり得るのではないでしょうか。それでも、欧米はまだ政策金利の下げ余地があるから頼もしいです。
 情けないのは日本。イニシアチブを期待する政治は脳死状態。政策金利を下げるにも下げ余地がない。数ある投資対象がある中で、こんな非常時に万一の備えが十分ではない先へ、わざわざ優先して投資するところがあるでしょうか。景気の先行きを表す鏡といわれる日本の株価が欧米各国よりも出遅れているのは、この辺に事情があるのではないでしょうか。