米連邦準備理事会(FRB)は、昨日早朝に政策金利を0.75%の幅で緊急利下げを行いました。市場は更に29日、30日の公開市場委員会(FOMC)でも追加利下げを期待しています。
 私は米国政府の減税策発表後も世界同時株安が続いたため、「緊急利下げの可能性はありかな」と思っていましたが、下げ幅を0.75%ではなく0.5%だと思ってましたから、FRBは思いきったものだと意外に思いました。しかし市場はそれでも「足りない」「遅い」と言います。
 テレビのニュース番組ではどこをひねっても、「世界同時株安、景気停滞期に向かう、スタグフレーションも」とか、「政治の無関心は許せない」、「年金はどうなる」などなどと、朝青龍関の勝ち負けの結果と同じぐらい、熱心に伝えています。「よくもまあ、こんなに悲観的な話ばかりを並べるなあ」と思います。悲観的な話の方が受けるからなのでしょうが、見ていて「興味本位で取り上げてもらいたくないなあ」と感じます。逆に、言いたい放題のコメンテーターの意見を真に受けて、実効性も考えずに政治家が人気取りの政策案を乱発して、かえって国会が回らなくなってしまうことを懸念します。
 今回の米国の対応は参考になります。景気後退を回避するには、政府と日銀が同じ方向で国民や世界にメッセージを発し、速やかな対策を実行することが必要だと思います。そういう意味では日本の状況は落第以前です。
 おそらく政府は、ここまでマスコミから「景気に無関心」という批判を受ければ、景気に関心を持っているという態度を示し、「政府は日銀に要請しているけど日銀が前向きではない」と日銀のせいにするでしょう。日銀総裁の任期が3月に迫っています。日銀総裁は順当に考えれば、現在副総裁である武藤氏なのですが、財務官僚出身の武藤氏の就任に民主党から異論が出ているため、次期総裁の決定が宙に浮いています。そんな状態で、現在の日銀には独自の政策を行える状況にはありません。おそらく政府・自民党は「民主党が反対しているから、日銀総裁が決まらず、市場が動揺し株安が進んでいるんだ」と民主党に責任を押し付けるでしょう。民主党は、「株安は明確なメッセージを出さない政府・自民党に問題がある」と主張するでしょう。そして何も決まらない。決められない。
 政府には日銀と協力して、断固とした景気運営をしていく気概が全く見えません。そんな政府と日銀の関係で、米国政府のような芸当は期待できません。
 私はますます、現在の投資環境が2003年のどん底とだぶって見えます。まさに当時は人、設備、不良債権のリストラが必要なのに、決断する人がいなくて、だらだらと国家的なじり貧を続けていました。政治のイニシアチブが全くなかったとき。「このままではどうなってしまうのか」という閉塞感と危機感がありました。そこで動いたのが、当時の小泉首相・竹中大臣コンビと福井日銀総裁。政府と日銀は景気回復に向けての共同作業を始めました。そのときには、与党・野党・専門家が「道路を造って公共事業を増やせ」とか、「預金者保護のために金利を上げろ」とか、「日銀がお札を刷って日本株を買え」とか、さんざん言いたいことを言いましたが、「できることはすぐやる。できないことはしない」と、政府・日銀にはメリハリがあったように思います。
 私はそのときも思いました。「こんだけやることがあるのに、やれていない状況が今なんだから。ちょっとやる気出してましになれば、この国は活気づくはず」。2005年9月の小泉衆院選大勝以降、日本は何をやってきたのでしょうか。2003年後半から2004年にかけて頑張った成果を食いつぶしただけではなかったでしょうか?
 すなわち、今はゼロスタート。何も期待しないところからのスタート。情けない政治がちょっとましになっただけでも、日本の評価が上がる可能性を感じませんか?いつ、何がそのきっかけとなるのか?私は楽しみです。日本経済の地力をそんなに悲観する必要はないと思います。民間活力の邪魔になっていることの改善に努力し、まともな環境を少し用意してもらえればいいことです。政治は誰が見てもおかしいことは排除し、当たり前のことを当たり前にしてもらうだけでけっこうです。