株式投資の場合は、特に買い材料がない株式でも値が上がって救われることがあります。一方で不動産投資、特に賃貸経営は放ったらかしでは採算が合わない投資だと私は考えています。
「不動産投信のファンドマネージャーはやるもんじゃない」と思います。
 賃貸物件は保有すればするほど、資産価値は下がり、しかもテナントの希望に添わなければ出て行ってしまいます。当然、メンテナンスが行き届いていない物件には入居もしてくれなくなります。
テナントが一つ去り、二つ去って、ゴーストオフィスになれば完全に商品価値さえも失います。自分の物件はまともであっても、回りがゴーストオフィスになったり、ゴーストタウンになれば、やはりテナントは入りづらくなってきます。
 したがって、魅力的な物件の価値を保つため、「メンテナンスに費用をかけ続けなければならない」宿命があります。そのためには資金調達が必要であり、銀行の借り入れ、社債の発行、公募株式による増資が命綱となります。不動産投信の場合、株価が大きく値下がりし、その後も株価回復のメドが立たなければ誰も株式の増資を受け入れてくれる投資家が現れなくなります。
 収益の青写真は既存の物件での賃料アップによる増収に期待することに加えて、新規の優良収益物件を仕入れ続けないと描くことができません。この収益物件の取得にも、新規資金が必要になります。おまけに、配当率を高めるためには、時として借り入れを増やして収益物件を仕入れ、見かけ上の体裁を整える必要もあります。
 こうした努力を積み重ね、実績を上げる不動産投信は投資家に受けて株価が上昇します。株式であれば株価の上昇は好ましいことですが、不動産投信の場合は株価が上昇することで、不動産投信のメリットである配当利回りの低下につながり、株価が値上がりするときはファンドマネージャーにとって辛い局面になります。配当利回りを上げるために、借り入れを増やし、新規物件の獲得に走らなければなりません。
 しかし現在のように、株価が大きく下がり株式増資もままならず、借り入れが難しくなっただけではなく、「貸していたものも返せ」と言われると、資産が不動産であり急に換金が出来るわけでもなく、いっぺんに手詰まりになってしまいます。これを不動産投信のファンドマネージャーの力量不足と責められるでしょうか?特に一生懸命、我が国に不動産投信を根付かせようと努力してきた方々にとっては気の毒な環境にあると思います。努力が報われることが少ない、不動産投信のマネージャーにはなりたくないと私が考える所以です。それほど、不動産投信のファンド運営は難しいと思います。逆に、ここ数年急速に増えた不動産投信の数を見るにつけ、「この国に賃貸経営のプロがそんなにいたのかなあ?」と疑問に思っていました。
 不動産投信があったから日本は不動産不況から立ち直るきっかけを得ました。今後も不動産取引の流動性確保に不動産投信が果たす役割は大きなものです。100年住宅、200年住宅はもちろん必要なのでしょうが、それ以前に不動産投信をブームで終わらすのは国家の損失です。投資家が安心して参加できるセーフティネットの整備が必要だと思います。投資家の自己責任ですませようとすれば、投資家の支持はなくなり、不動産投信の支えをなくしてしまいます。