以前は時代が大らかだったのでしょうか?証券会社の新人時代は営業エリアをくじ引きで決められ、その地域の住宅地図を持ち、一軒一軒、そして建っているビルの中を軒並み、「●●證券の前川と申します。怪しいものではありません。財務担当責任者の方にご挨拶させていただきませんか」と練り歩きました。これをローラー作戦と言います。会社に帰ると、名刺を持って、「どんな人に会えたか」、「どんな話が聞けたか」、「どんな感触を得たか」を、めいめい報告をしました。
 飛び込み営業ですから、相手の時間お構いなしにお邪魔し、相手が悪く怖い目にもあったことがあります。しかし、たいていの方は「また新人さんが回る時期になったのか」と好意的だったように、今振り返ると思います。だんだん、過ごす時間が長くなり、お客さんにもなってもらえました。
 テレコール。「これからテレコールの時間だ。かけた振りをしても分かるぞ。身のあるテレコールをしろよ」と上司から新規顧客を見つける電話をしろと発破をかけられます。大抵はすぐ「うちは間に合っている」と断られますが、中には話し込めるお客さんができて、先方から「電話では詳しいことが聞けないから来て」と誘われたりします。当時は、お客さんも金融機関の担当者の扱い方に慣れていました。
 それがいつからなのでしょうか。こんなにお客さんと金融機関担当者の間がぎこちなくなったのは。今ではこうしたお客さんの要望がない訪問やテレコールをしてはいけないことになりました。
また、女子の担当者は、お客さんの要望があっても、1人での訪問は通常しません。これは防犯上のものです。相手お客さんもどんな人であるか、わからないからです。
 電話の内容はすべて自動的に録音されています。これはお客様のためであり、金融機関のためです。お客さん、そして金融機関双方が鎧に身を固めて対応しなければならない様子です。
「大らかに投資をしたい」お客さんと「大らかに投資するお手伝いがしたい」金融機関をマッチングする仕組みはできないのでしょうか?できるのだと私は思います。
 金融機関側に「投資家が抱えている不満、不安はどんなとこにあり、それはわれわれの努力で解消できることなのか」と、ひとつひとつ、つぶしていく、やる気の一歩ではないでしょうか。
 たまにかかってくる証券会社からのテレコールの内容はただ要件のみ。「あさって締切の外債があるんですけど・・・」。取った途端に「売り込みだな」と分かる電話に付き合うほど投資家は暇ではありません。切らせないだけの情報に工夫を付けていただきたいものです。