日経新聞に「金融庁、貸し渋り監視強化、中小向け融資 抜き打ち検査検討」という記事がありました。「きちんと審査せずに融資を拒否する」、「既存の融資を保証付き融資に借り換えさせる」、企業から金融機関の貸し渋りや不当な融資回収を訴える声が相次いでいるという記事でした。
 そして、こうした解消のために、金融庁は「融資申込みの受け付けの管理体制は適切か」、「融資を断ったケースの根拠が妥当か」という検査を行うということです。
 貸し渋り・貸しはがしを行う金融機関はけしからん。金融機関であれば金を貸せ。金融機関はこれまでも、「晴れている日に傘を押しつけ、雨が降り出すと傘がぬれる前に回収する」と言われてきました。金融機関、悪玉論が蔓延していますが、もう少し金融機関側の意見も聞きたいものです。
「なぜ貸し渋り・貸しはがしをせざるを得ないのか。それは金融機関内の事情なのか、それとも、そうせざるを得ない事情があるのか。どうすれば、貸し渋り・貸しはがしの状態から正常な融資ができる状況に戻るのか」。現場にある実際の声と知恵を吸い上げる必要があるのではないでしょうか。
 確かに、財務省のホームページには、中川財務大臣の肝いりで始まった「金融安定化大臣目安箱」という仕組みがあり、金融機関に対する意見・苦情を受け付ける箱と政策金融機関に対する意見・苦情を受け付ける箱を用意しました。ところで、今回の監視強化する側の金融庁に対して、意見・苦情を受け付ける箱は用意されているのでしょうか。
 もし「金融安定化大臣目安箱」で金融庁に対する意見・苦情を受け付ける機能があっても、ここに意見具申するのは、当然金融機関の人間ですから、金融庁ではなく財務省であっても、同じ規制官庁であるため、正直な意見を集めるのは難しいでしょうね。
 「一方聞いて沙汰をするな」という言葉があるように、金融の目詰まり解消が景気回復に欠かせない条件であることは間違いなく、ただ金融機関を悪玉にして、「金を貸せ、貸せ」と唱えても、見せかけ数字をいかにつくるのかに焦点が移るだけです。
「なぜ貸せないのか」。「こんな規制があるから」、「不良債権を増やしたくないから」、「まず焦げ付き見込み資金の回収をしてから」等々、金融機関の言い分を、財務省や金融庁の中で止めないで、全て一般にオープンにして、
「それはもっともだ」
「それは一理あるけど、もっと工夫があってもいいんじゃないか」
「それって金融機関である意味がないじゃないか」
という議論を起こしたらいかがでしょうか?
個別具体的な話までいりません。「これって、一般常識としておかしいと思いません?」という、世間の常識に照らして判断してもらいたいという、金融庁側の意見、金融機関側の意見、融資を求める側の意見だけでいいと思います。「これっておかしい」という事例が明らかになれば、「なぜそんな非常識なことが行われるのか」、「どうすれば、そんな非常識な判断・行為を改めることができるのか」と自然に無理な貸し渋り・貸しはがしは少なくなってくると思うのですが。
 それには、自分の出した情報が今後に生きるという期待がなければ、良い情報が集まるわけがありません。是非、情報を国民に一般公開してもらいたいと願います。
 同様に、現在、「非正規雇用の突然首切り解雇」で企業に非難が集中していますが、企業側の言い分にもっと耳を傾けることも必要だと思います。「なぜ首を切るのか」、「なぜ首を切らざるを得ないのか」、「そうならないためには、どんな方策が考えられるのか」。
このままでは、非正規雇用だけではなく、正規雇用にも広がるでしょうし、頑張っている企業自体が倒れてしまいかねません。
 したがって「こういう状況が確保されれば、金融機関として融資をのばせる」、「こういう状況が確保されれば、企業として雇用を守り利益を出すことができる」という金融機関や企業をいかに応援していくか、知恵を絞るべきだと思います。存続の方向性が見えてくれば、よいモデルケースとなり、次に続く企業が増えていき活気が戻ってくるのではないでしょうか。
 工夫しながら企業の融資要請に応えている金融機関、工夫しながら雇用を守り、利益を守っている企業。なんとか企業の融資要請に応えようと頑張っているけど今一歩及ばない金融機関、なんとか雇用を守り、利益を守ろうとしている企業。その姿の中に、景気を回復させるヒントがあると思います。それをサポートする役目が政府です。融資をあきらめた金融機関、自助努力をあきらめ救ってもらうことばかりを考えている企業と、一律に扱うべきではないと思います。