金融庁は都銀や地銀計29行を対象に2018年3月末時点で顧客の投資信託における評価損益状況を調べたところ、「全体の半分近くが損を抱えている」と発表し話題になりました。

同じ投資信託を保有していても、投資するタイミングで損益状況は変わります。含み益だったものの多くを処分した後で含み損を抱えたものだけをそのまま残したケースが多かったのかもしれません。したがって、運用の成功、失敗は個別投資信託の一時点の評価で、運用の善し悪し、全体を結論づけるのは乱暴だと考えます。

私が証券会社時代にお世話になったお客様で印象に残っている言葉があります。

「前川さんね。証券会社が手数料でいくら儲けても、それは構わない。だけどね。お客さんには、せめて自分が受け取った手数料以上の利益を儲けさせられなければ存在価値はないよね」

まさに、その通りです。「手数料以上のリターンが見込める提案」「リスクに見合ったリターンの提案」を投資家は求めているのです。

 

最近、投資信託の実績は、税務上の損益(評価損益)と合わせて、トータルリターン損益を説明するようになりました。

トータルリターンとは、①現在の評価額+②これまでに受け取った分配金総額+③これまでに売却して出金した総額-④これまでに購入した投資総額(手数料を含む)を表したもの。

つまり、現在の投資信託が儲かっている、損しているだけではなく、これまでいくら投資してきて、分配金を受け取って、途中で売却したものを含めて、トータルの損益をみないと本当の実績が見えてこないからです。

しかしこのトータルリターンは、現在保有している投資信託に投資してきた結果でしかありません。

 

さきほどのお客さんの要望に応えるなら、金融機関の口座毎に、①お客様が現在保有する預かり資産の評価額、②お客様が口座に入金した金額合計、③お客様が口座から出金した金額合計、④購入手数料などこれまでのお客様から受けた手数料合計を、いつでも顧客が確認できる仕組みが必要です。これがあれば、個別で儲かった、損したではなくて、これまでの金融機関との付き合いで「預けてどれだけ増えたのか、減ったのか」が一目瞭然です。「確かに、前川さん、利益は出ているけど手数料の割りにはねえ・・・」と嫌みのひとつは互いの緊張感になってよい効果を生みます。試しに聞いてみて下さい。

多くの金融機関は、これを調べようと思ったら、過去にさかのぼって、いろいろな箇所の数字を集めて、それが実際適当な数字かどうかの検証に時間がかかます。オーダーメイドの対応なので多くの人から要望が来たら、すぐにパンクしてしまいます。

フィンテックが身近になってきて、金融機関ではなく、他業種で「そんなこと、簡単ですよ」と柔軟な頭と軽いフットワークでチャッチャッとやってしまう世の中に間もなくなるんでしょうね。

「ATMの維持や振込手数料の負担が重い」と利用者への負担ばかりを、安易な方法しか思い浮かばない金融機関。「それじゃあ。そこまでして付き合う意味ないよね」と言われ、見切られても仕方ないと思います。