私は預貯金の低金利に不満を思っている人で、何か預貯金に代わる金融商品はないかと探している人には、やるやらないは別にして、債券投資の手段を知ってもらうことでマイナスになることはまったくなく、世の中に債券投資を知らなくて損をしている人がたくさんいると考えています。
そのため、最近の個人向け社債人気は債券投資への理解が深まる機会として喜んでいます。
しかし昨日の会話の中に、「○○さんは、社債と定期預金を一緒にするなんてけしからん。よく債券を理解せず適当なことを言っている」と憤慨しているという話を聞きました。その○○さんというのは、運用の道では有名な人のようですが・・・。
誤解を恐れず申し上げれば、投資の話を専門にする人で、もちろんその中で債券の位置も理解している人が「定期預金と社債は違うもの」と切って捨てるコメントをすることが投資家を救うことにつながるのでしょうか。
預貯金の低金利に悩み投資を考えている人にとっては、「定期預金と社債にはどんな点が似通っていて、どんな点が異なり、どんな注意すべき点があるだろうか」と、その後につながる流れを作り出していくべきだと考えます。
必要以上に「債券は株式と同じ有価証券でリスク商品である。償還途中で売却する場合は、投資環境により損が発生することがある」と強調し過ぎるため、いつまでたっても、預貯金者にとって債券投資は「難しいもの」、「自分たちには縁遠い」商品という印象がつきまとっています。
債券。国債や社債。誰もが一番馴染んでいる預貯金の性質に近い金融商品であるはずの債券が難しい商品であるのであれば、なんで、もっと投資経験や知識が必要とする株式投資などにいきなり飛び込んでOKなのだろうか。
債券を知った上で「その程度のリターンでは物足りないから株式投資にする」と株式投資に飛び込んでいるなら自己責任で仕方ありません。しかし「債券投資を知っていれば、あえて株式投資をせず、こんなに大きな損をしなくてすんだのに」という人の後が絶えないのは、債券投資を正しい理解で利用してもらおうと時間をかけ丁寧に説明する人がほとんどいなくて、「債券は有価証券であり預貯金とは違う」とバサッと切って捨てて終わりにする人が多かったからです。
「またそんな言い方をする人がいる。確かに言っていることは正しいよ。だけど、それは誰に対してためになる言葉?」と憤りさえ感じます。「貯蓄から投資へ」の流れで「預貯金から株式へ」と向かう前に、「預貯金から債券、債券から株式へ」と債券投資をワンクッションに入れた方が良いと多くの人が思うはずです。「債券と預貯金は別物」。その後の言葉が大事なのだと思います。