今証券会社では「投資信託は売れるけど株は売れない」営業マンが多いらしいですね。営業マンは自分の考えをお客さんに話しちゃいけない。「私はだから円安が更に進むと思います」とか、「日本株式相場は今では世界で唯ひとつ割安な水準に残されたマーケットではないでしょうか」とか、「今は株価は冴えないですけどドコモ、いいんじゃないですか。というのは・・・」とか。根拠が明確な資料をお客様に見ていただいて、お客様に判断してもらうように指示されています。「あのアナリストとして有名なA氏が「市場の先行きについてのレポート」を最近出しました。投資判断の参考になりますから読んでみてください」と手渡しします。
昔の営業マンの中には、売りたいがために「それって話がおかしくない?それって違うよ?」という勉強が足りない話や論理が矛盾した話、そもそも出所が怪しい話を、まことしやかに、お客様に話していました。「そんな売り方で売れるわけ無いよなあ」と横で電話している先輩の話に耳を傾けていると、結局大口の約定が決まったりしました。その先輩曰く「理屈だけでは売れない。全人格をかけて売るんだ」。確かにこの先輩は結構強引な売り方をしていたけど、トラブルになることは少ない。「同じ売り方をしてもトラブルになる奴とならない奴がいる。その違いはそこに愛があるかないかだ」。今ではこれが営業マンの高慢で手前勝手な理屈であり、お客様と長いつきあいを目指すなら、そこまでたとえ信頼関係があったとしても、やってはならないことだと思いますが、当時は「すごい人がいるもんだな」と感心したのを覚えています。
昔は断定的な物言いが多かったので、「おまえから買った銘柄、全然上がらないじゃないか。上がらないどころか下がっている。どうなっているんだ?」と怒るお客様が多くいました。ある意味で昔のお客様は、「おまえに勧められたから・・」と営業マンのせいにして、ストレスが解消できました。営業マンも言われ放しでは次の商売になりませんから、お客様に怒られ、先輩・上司に怒られ、相場動向や個別銘柄について、勉強しました。実際一日中、相場のことを考えていました。ですから「証券マンと言っても、入社3年ぐらいの新人では頼りないよねえ」と言われて、「確かに入社して3年ですが、我々は毎日、毎時間、相場を見てきました。恐らく皆さんが10年かかって見る内容を見てきたつもりです」とムキになったりしました。するとお客様もムキになって「だったらこれをどう考える?」と宿題をもらいました。こうしたお客様とのやりとり、時にはトラブルなどの経験が、営業マンの知恵につながり、さらにワンステップ上のサービスにつながったのだと思います。
それが、今証券会社の店頭では行われなくなってしまった。証券会社が銀行や保険や郵便局と違うのは、「価格変動商品、投資に強い」「助言ができる」金融機関だったはずなのに。
投資の話が苦手な金融機関の窓口担当者が増えてしまう気配を残念に思います。店頭の窓口で、営業マンとお客様が投資について語り合う機会が一度消えてしまったら、一からもう一度火をおこすのは大変です。貴重な火を消さずに、守ってください。それが、他との差別化ではないでしょうか。
投資に興味を持つお客様は金融機関をあてにせず、せっせと毎日勉強しています。
「ちょっと勉強が足りないんじゃないの?」
「次回はお客様をうならせる話をさせていただきます」
「本当かあ。頼むぜ。次回楽しみにしてる」 そんな会話どっかで聞きたいなあ。