国土交通省、金融庁と東京証券取引所は、国内で上場する不動産投信(REIT)の海外投資を来年4月メドで解禁する方向で検討に入ったらしい。これにより、これまで国内不動産に限定されていたREITに海外不動産も組み入れることが可能になります。
REIT市場がある17カ国の大半では、海外投資を認めていて、禁止は日本とタイなど4カ国とのこと。海外投資が解禁されないままだと、国内のREITは国際競争に負けるらしい。
ここの点が私は一番ひっかかっているのですが、「国内では優良物件の取得競争が激化する中で新規投資が難しくなっており、成長に限界が見える」という業界関係者の考え方です。
国内市場に先が見えないから、海外市場に先を賭ける。そんなREIT運用者であれば、REITを手仕舞って、投資家に資金を返還すべきではないでしょうか。得意分野である日本市場の不動産市場で今後に先が見えない奴が、土地勘、鑑定能力、マーケティング能力など、実力も能力も定かでない海外市場で腕試しをしようと話しを聞いて、何で大事な資産を預けることができるのでしょうか。投資家のためではなく、自分たちの保身のための、海外投資解禁であれば論外です。
もし海外市場での実力・能力に自信があるなら、REITではなく、海外市場で直接REITを上場させ、日本人の投資家を募ったらいいじゃないですか。何で、J−REITの中にわざわざ海外不動産を組み込まなければならないのでしょうか。投資家の立場で言えば、日本の市場に特化したJ−REITだから、海外リートとの違いが出て意味があるのです。J−REITがいつのまにかグローバルREITに変わってしまったら、困ってしまう投資家がたくさんいるはずです。
個人的には、海外不動産に投資するなら、実力未知数のJ−REITを通じて投資したいと思いません。「J−REITを通じて是非海外不動産に投資したい」という日本人投資家の声を是非聞かせてください。悪意に取れば、J−REITが海外物件に投資できるようになれば、持て余した物件を買ってもらえるチャンスと手ぐすねを引いて待っている人たちがいるような気がします。
そんな不信を考え過ぎだというだけの、投資家に対する説明が十分なされているようには思えません。「日本株だけに投資します」という投信に投資していたはずなのに、いつのまにか「新興国も含む世界株式」に投資していたなんてこと、有り得ませんよね。
金融商品取引法に従えば、まず「日本の不動産市場に投資していたJ−REIT」が、海外市場を含む不動産に投資する場合に、どんなリスクが新たに発生するのかを、投資家が理解できるレベルまで丁寧に説明しなければなりません。その説明を期間が余り残されていない4月までに十分に行われるのでしょうか?