唐突に出てくる話はどうしても胡散臭く思ってしまいます。未上場企業を主な投資先とする「買収目的ファンド」。米国ではすでに150社以上上場しているらしい。「買収目的ファンド」を検討する東京証券取引所は、上場すれば個人投資家も比較的容易に投資できるようになるとメリットを強調する。ところで、個人投資家から「買収目的ファンド」に投資したいと声が上がっているのだろうか?米国のように「買収目的ファンド」が上場し個人投資家でも投資する機会が欲しいという声が上がっているのだろうか?
現在、新興企業の株式でさえ、「本当にこの会社を上場させて良かったのか」と上場審査や、上場後の検査に問題ありという指摘がある。「買収目的ファンド」の上場審査や、上場後の検査については、万全を期すことは可能なのだろうか。「あれはあれ」、「これはこれ」といった場当たり的な懸念を感じます。
上場後、2−3年以内に買収先が探せなかった場合、事務コストを除いた元本の98%を株主に返金させるとのこと。つまり、2−3年程度は買収先の当てもなく、「買収目的ファンド」という名目で一般株主から資金を集められるということか。
「我々は、M&Aでこれだけの実績を持つメンバーで買収目的ファンドを立ち上げます」という、経営陣の顔ぶれに期待して「株主になれ」ということか。買収した企業の時価評価のチェックを誰が行えるのか?今回のサブプライム問題で「証券化商品の評価が、いかに曖昧に行われてきたのか」が明らかになりました。しかしその証券化商品には「証券化するための担保」がありました。
買収企業の価値をはかる、個人投資家にもわかりやすい評価のモノサシが存在するのでしょうか?そもそも、内容を理解するのに専門性が高い「買収目的ファンド」を、広くあまねく投資家に案内する必要があるのでしょうか?最近でも、証券会社グループのキャピタル会社で粉飾決算がありました。上場した「買収目的ファンド」で同様な不正が発生し、「投資家保護に留意して検査に臨んできましたが、不正を見抜けませんでした」と証券取引所や幹事会社が頭を下げる結果にならなければと願います。
「買収目的ファンド」を上場させる大義名分である「一般株主に開放するため」という大義名分が私にはしっくりきません。「買収目的ファンド」は、その意図を組んで長期的に応援したい投資家から資金を集めるべきで、短期的な利益を上げられれば良いと考える投機家や内容も分からずに投資してしまう人まで呼び込んでしまう上場以外に、適切な手段はないのでしょうか?
どうも上場させたい意図が、投資家の利便性ではないところで強く働いているように思えてならないです。取引所にはまず、新興企業市場の活性化に向けての努力に全力を尽くしてもらいたいと思います。