ETF、取引所で取引される投資信託。株価や商品の値動きに連動するインデックスファンド。通常の投資信託とは異なり、取引所で上場している株式と同様に常に値動きがあり、指し値はもちろん、成り行き取引、信用取引も可能です。一般の投資信託に比べ、売買手数料、信託報酬ともに安いところが注目され、取引所は海外に既に上場しているETFを国内でも投資が出来るように積極的に準備を進めています。
通常の投資信託を現金に換える場合は、解約であったり、運用会社の買取りであったりで、よほどのことがない限り、換金できないということはありません。しかしETFは市場で買い手がいなければ値がつかず、売れないことが当然あります。売り気配で何日も値がつかないことだって有り得ます。当初の売買手数料は通常の投資信託に比べて安いですが、常に値動きがありますから、ついつい売ったり、また買ったりをしたくなる機会が増えます。過当売買をすれば、安い手数料でも負担になり利益を損なう事も有り得ます。
取引所がETFに期待するのは、株価低迷で個人投資家の参加が細っていること、そして戻ってくる様子もないことに対する危機感です。そのため、外国為替証拠金取引、商品取引、そしてこのETFと次々品揃えを増やして、投資家を呼び込もうとしています。
ETFという商品自体は投資家にとって有効な投資手段のひとつだと思いますが、果たして投資家が求めた結果の品揃えでしょうか。ETFは株式と同じで、常に買いたい人と売りたい人が存在するような、投資家が途切れなく入ってくる、流動性の高い市場を作るという覚悟が必要です。
ただ品揃えをするだけであれば、現在の新興市場株のように、たまにしか売る人がいない、買う人がいない、滅多に取引が成立しないゴースト銘柄を増やすだけで、最後には上場廃止で投資家に迷惑をかけ、悪い印象を残すだけです。覚悟のない品揃えはかえってマイナスだと思います。
大事なのは品揃えではなく、投資家が何故投資に気力を失いかけているのかの声を聞き、今後の対応をはかる努力ではないでしょうか。投資家が元気がないのは、ただ損をしているからだけではないと思います。小手先のイベントではなく、取引所、販売金融機関、運用会社など、投資関連のお仕事をしている人が原点に返って知恵を出し合いリセットしないと、投資家から頼りにされる存在には戻れず、「ただ手数料頂戴の業者」としか見られなくなりはしないかと危惧します。
それから海外ETFにはある意味注目しています。もし中国株ETF、インド株ETF、BRIKs株ETFなど、新興国株式のETFが根付いた場合、既存のアクティブ型投資信託との運用との差はどうなるでしょうか。新興国株を対象にした投資信託の手数料は比較的高いものが多く、そのコストに見合った実績であるかどうかを実際比較してみたいとずっと思っていました。楽しみです。
逆に言えば、運用会社にとっては、運用成績の説明責任を問われる緊張感が増す時代に入るということになります。