今後の視点 2026年4月

不確実性が積み上がるとき、市場はどこから崩れるのか—バブル破綻は「選別の機会」

世界情勢が急速に不透明さを増しています。イスラエル・米国とイランの対立が激化し、ホルムズ海峡は事実上の閉鎖状態に入りました。原油の供給不安は広がり、物流や保険、航路の変更など、世界経済の基盤に影響が及び始めています。しかし、こうした状況にもかかわらず、株価は大きく崩れていません。この「違和感」こそが、今回の危機の本質だと考えています。

市場は、金利や景気指標といった“予測可能な材料”には比較的冷静に反応します。しかし、戦争の行方のように終わり方が見えず、停戦しても再燃する可能性があり、関係国の利害が複雑に絡む事象には、市場は極端に不安定になります。—こうした不確実性が積み重なると、市場参加者は徐々に「動けなくなる」のです。

最初に止まるのは、新規投資です。
投資家は「分からない」と感じたとき、最も合理的な行動として“様子を見る”を選びます。これは個人投資家だけでなく、機関投資家や企業の設備投資でも同じです。将来の見通しが立たないとき、人はリスクを取らなくなる。結果として、市場には新しい買い手が入りにくくなります。

一方で、売りは買いと異なり、どうしても売らなければならない投資家が一定数存在します。資金繰りの悪化、マージンコール、ファンドの解約、リスク管理のための縮小など、「売らざるを得ない売り」が積み上がっていきます。
こうした売りの増加と買いの減少が同時に進むと、市場は下げやすい環境に入ります。バブルが弾けるときは、割高だから崩れるのではなく、「買い手がいなくなる」ことで崩れるのです。この構造が揃いつつあるのが、いまの市場だと感じています。

しかし、ここで強調したいのは、バブル破綻は「終わり」ではないということです。
むしろ、価値のあるものとそうでないものが選別される「始まり」でもあります。バブルの最中は、良い企業もそうでない企業も同じように買われます。しかし、バブルが崩れた後には、本当に価値のある企業だけが残り、しかも割安に放置される時期が必ず訪れます。

歴史を振り返っても、最も大きな投資機会は、常に「恐怖が最大化した瞬間」に生まれています。オイルショック後、ITバブル崩壊後、リーマンショック後——いずれも市場が混乱し、誰もが悲観していた時期にこそ、長期的に見て最も魅力的な投資機会が存在しました。

だからこそ、いま私たちがすべきことは、未来を当てようとすることではありません。
戦争の行方を予測することも、原油価格の天井を言い当てることも、誰にもできません。重要なのは、「来るべき瞬間に備えること」です。

具体的には、次のような準備が必要になります。

  • 流動性の確保:いざというときに動ける資金を確保する。現在が投資過多の状態なら一部売却して身軽にしておく
  • 投資対象のリスト化:どの企業・どの資産を買うのか、事前に選んでおく。投資妙味が高い対象を5つほどに絞ることが望ましい
  • 購入水準の設定:どの価格から買い始め、どの水準まで買うのか。ルールを決めておく
  • 心理の準備:市場が大きく下がったときに恐怖に流されないため、「下がったら投資する」という前向きな姿勢を持ち続ける

市場が大きく揺れたとき、準備がある人だけが機会をつかむことができます。

いまは、危機を恐れるのではなく、機会を迎えに行くための準備を整える時期だと考えています。

そしてもうひとつ大事なことは、冷静さを保つために情報交換の場を確保することです。恐怖や焦りを煽る情報が増えてくると判断がぶれやすくなります。普段からマーケットの見方で信頼できる情報源を探しておくことが重要です。できれば、身近に相談できる相手がいれば理想的です。専門家でなくてもかまいません。「これってどう思う?」と人と話すだけで、自分の思考が整理され、冷静さを取り戻せることがあるからです。

また「バブルが弾けた時はその後の大きなリターンを享受するチャンス」と聞いても自分は動けないという方もいると思います。その場合は、現在の高金利環境を活かし、預金からインカムゲイン目的の投資に一部振り向けることを検討してもよいと思います。ただし、これは「破綻の懸念が極めて低い」と判断できる安全資産に限るべきです。具体的には、長期の米国債や日本国債などを想定しています。バブル崩壊後のリスクオフ局面では、資金は再びこうした安全資産に回避し、現在の高金利環境はいずれ終わりを迎えるでしょう。今はその果実を確実に享受できる、貴重な「仕込み時」でもあります。