ついに大和證券はラップ口座の最低契約金額を300万円まで引き下げました。元々は超富裕層向けの運用助言サービスとして登場し、当時「コンサルの質を維持するためには預かり資産30億円以上の方を対象にする」といった高嶺の花のサービスが1000万円まで引き下げられてビックリしたのに、今度は300万円。ここまでくると、最低金額の根拠まで疑いたくなるくらい節操の無さを感じてしまう。
「サービスの良し悪しを手数料が高い、安いの絶対水準ではなく、質が割高か割安かで投資家は評価すべき」という訴えを私はこれまで繰り返してきました。
しかし、これまでのラップ口座における最低契約金額の引き下げの流れは「ラップ口座をいかに多く取り込むか」という戦略で競うポイントが「契約のしやすさ」に重点があり、果たして「コンサルの質は大丈夫?」と疑問を持たざるを得ません。
運用助言においては「投資家の現状把握」、「投資家の投資目的の確認」、「投資目的にあった金融商品の配分などの提示」、「投資後の投資家へのアフターフォローとその後の状況に合わせた継続的な提案」を投資家から当然期待されます。
この一連のサービスは契約資産30億円の人と1000万円の人とでは、助言者にとって投資家への助言準備にかかる負担度合いは変わるでしょうけど、3000万円の人と300万円の人とでは、ほとんど変わらないと私は思います。金額をある程度以上で線引きするのは、サービスの質を維持するためには必要なことです。これは投資家を守るためにも必要なのです。
にもかかわらず、同じラップ口座としてできる宣言をするということは、助言者が自分の負担を増やして割が合わなくても口座獲得を優先させたか、元々のコンサルの質がそれなりのものでしかなかったということだと思われます。
私が心配するのは、売り手側の理屈で「こんな安い手数料しか取っていないのだから、ラップ口座とはいえ、サービスを必要以上に期待されても困る」という対応を行い、投資家が「富裕層向けのサービスをラップ口座で受けられるというから口座を開いたのに、投資信託をただ購入するのと同じだった」と不満を口にしてラップ口座の評判を落とし、ラップ口座全てのコンサルの質まで疑われてしまうことになりはしないかということです。
ラップ口座の良さは、「年間一定額の手数料を支払えば、その後の費用は一切心配しないでいい」ということです。私は提案します。いっそのこと、「富裕層向けのサービスをあなたに」という誘い文句は封印し投資家に期待させず、「お預かりした資産に対し、1年間は一定額の手数料しかいただきません」という案内にしたらいかがでしょうか?株式をやろうが、外債をやろうが、投信をやろうが、1年間一定額。もし助言をもらいたい投資家には「助言内容として以下のことをします」と明確に宣言し、見合った手数料を提示する。
耳障り良く、宣伝する金融商品で、実際投資家に為になる金融商品はほとんどありません。為になる金融商品は、実績が評価され口コミで広がるものです。ラップ口座の引き下げ競争が過熱した以降、少なくても私の耳には「ラップ口座をやって良かったよ。すごく親身になって、良い助言をもらっていて助かっているよ」という投資家の喜びの声を聞いたことがありません。
ラップ口座を前面に出して宣伝している金融機関は「コンサルの質に自信あり」と胸を張って言える取り組みをしていますか?