「何を、誰を守りたいのか」のベクトルがずれていません??

 住宅ローンや車のローン。家電製品等の購入のためのローン。「ローンは怖いから現金で支払う」と言える手元資金に余裕がある人が少なくなってきました。
 今回の金融危機で、限度を超えた借り入れをしていた人が消費からドロップアウトしていくのは仕方ない話ですが、健全な債務者、時間をかければ利息を支払い続け元本の完済に問題のない人まで、消費からドロップアウトを強いてしまう政策を、この金融危機の最中、消費回復の糸口を探している最中に実行するのは柔軟性に欠ける政策だと私は考えます。
 貸金業法の改正に伴う「年収所得の3分の1以下に抑える」総量規制強化の手順が性急すぎると思います。
 景気の良いときにいらぬローンカードを押しつけられ、利用が浸透してきたところで突然、個人情報の最たるもの、所得証明書等の提示がなかったら、利用ができなくなるかもしれないと利用者に脅しをかける。
 「少々の金額を利用するために、そんなプライバシーにかかわる大事なものを提示しなくてはならないならやめてやる」と大抵の利用者は考えるでしょう。「えっ?そんな反応が利用者から返ってくるとは思わなかった??」と言うのでしょうか?
「当然理解できるけどやってもらわなければ困ること。あえてこのタイミングですぐに・・」というのであれば、この規制は「誰を、そして何を守るための規制なのか。そして、これは本当に今でなければならないのか」。悪徳業者の徹底した取り締まりと過払いに対する消費者の意識高まりで、健全なローンのあり方がすでに進展してきていると思います。
 健全な人であっても、家など大物を買うのに、大抵はローンを組みます。しかしローンを組んだ健全な人であっても、突然「利息はもちろんだけど、元本部分も返済してくれ」と言われて、「はい、わかりました」と返済できる人はほとんどいないでしょう。だからローンを組むことを決めたわけですから。
 「ローンは長期的な資金計画を元に組みましょう」。そう注意を促している先が自分たちの都合でローン利用者の計画を無視して事を進めようとしている。これは余りにも手前勝手な行為だと思います。
 各国中央銀行から今回の金融危機発生の反省により、「景気が良くなる過程では過度なインフレを招かないように、金融機関の貸し出しに直接規制をかけたほうがよい」という声が上がっています。今みたいに、消費が縮小均衡に陥るかもしれないときに行う規制なのでしょうか。
当たり前に「ローン社会」になったと言われていた時期はほんのちょっと前の時期でした。
せめて、利息の支払いを律儀にこれまでがんばって守ってきたローン利用者がこれまで通りの生活を維持していけるように保護していく仕組み作りが必要なのではないでしょうか。
 こんな消費の健全な芽を摘む施策が機械的に行われていく中で、とても投資に気持ちが向くわけがありません。