「インフレは芽であるうちに摘んでいく」と、欧州中央銀行(ECB)は「景気に配慮しろ」という声に耳を貸さず、2%から3%まで、昨年12月から4回連続で政策金利を引き上げました。そして明日5日は5回目の引き上げが行われると市場は織り込んで動いています。米国は今後政策金利の引き下げが噂され、日本はゼロ金利が解除されたものの、欧米のように政策金利の大幅な引き上げはないとの見方が大勢を占め、消去法で欧州金利の上昇期待が勝ち、ユーロは1999年誕生以来の高値圏。逆に円は取り残され独歩安。
日本の主要な貿易相手国・地域との為替レートを貿易額に応じて加重平均し、物価水準を加味して算出し、日銀が発表する9月の実効レートでは、なんと21年ぶり円安水準にあります。
政策金利引き上げの大義名分だったインフレの象徴である原油相場に落ち着きが戻ってきました。景気に減速感が出てきた欧州連合の主要国ドイツ・フランスからはユーロ高に対し悲鳴が上がり、日本も欧州との摩擦を避けるため、これに同調しています。それでもユーロ高はおさまる気配がありません。
それは政策金利を継続して引き上げユーロ高の引き金を引いた欧州中央銀行(ECB)が依然としてインフレ退治の姿勢を崩していないからです。つまりユーロ高を進めているのは日本や米国の意向というよりもユーロ内にあるということです。欧州連合(EU)は25カ国、うち12カ国が通貨ユーロを採用しています。12カ国の単一通貨の価値を守るために欧州中央銀行(ECB)があるわけです。12カ国あれば、「ユーロ高が良い国」「ユーロ安が良い国」「特に関心がない国」と状況はまちまち。参加国の合議で動くEUは臨機応変の対応が取り難くなるのは当然です。対応が遅れれば行き過ぎを経験しなければ終わりません。現在は1999年ユーロ誕生以来初めてのユーロ高対策に直面している状況にあります。
EUがユーロ高をプラスに転化する経済圏になろうとするのか、インフレ退治の矛をおさめて、米国と同様に景気配慮に方向を変え、インフレにならないことを祈る選択するのか。明日決定される政策金利の発表に注目です。