コンピューターの発達に伴い、人間ではとても追いつかない計算を瞬時に行い、手作業では到底追いつかない莫大な事務作業を難なくこなせるようになりました。たとえば、最近の株式環境は過去のどの場面に似ていて、その時に割高割安のモノサシとして何が有効であったか、そして最近の株式環境で有効なモノサシにどんなものがあり、それに基づくと、具体的に何が割安に放置され、何が割高に買われているのか。
売買注文を発注する際には、どのくらいの株数で、どのタイミングで、どこの証券会社に発注したら、コストが安くて、速やかに約定が出来るのか、などを、何千、何万という選択肢の中から選ぶ作業をする。まさに人間業ではありません。
このように機械に任せた売買をシステム売買と言いますが、私は実のところ「システム売買」が大嫌いです。過去の例から成功パターンを抽出し、現在に当てはめるものが大半だからです。投資をやっていて、よくありませんか?「あれっ、前はこのパターンで儲かったのに」って事。前のパターンに当てはまらない相場になると、勝利の方程式だと思っていたやり方に固執して、転換が遅れ大きな損をしてしまった事。私は勝利の方程式の存在を信じません。大事なのは、逆境の時にも冷静な判断に戻れるような「平常心」を養うことだと思います。システム売買で「勝利の方程式」なんてものを持ったなんて慢心していると、「平常心」の邪魔になり大きな損をすることになりやしないかと危惧します。大事な資産を機械に判断まで任せて、あなたは良いのですか?結果責任は機械が負うのではなく、あなたですよ。
機械で作業の効率化を図るのは大いに結構ですが、最終判断は人間様が行いましょうよ。
先日、昨年5月の世界コンピューター将棋選手権で初出場で見事、世界一に輝いた「ボナンザ」という将棋ソフトと、将棋界のタイトル保持者「渡辺竜王」との対戦がありました。会場の参加者には「是非渡辺竜王に勝ってもらいたい。将棋ソフトから免状をもらう世の中になったら淋しい」というエールがありました。
序盤でまだ先が見えていない段階のところで、「ボナンザ」は勝負の決めに出る手を打ってきて「渡辺竜王」は一瞬戸惑ったそうです。「ボナンザはもう、この段階で勝てると思ったのか」と思ったそうです。まるで剣道で向かい合っていて、何もしていないのに「参りましたと言え」と言うのか。漫画北斗の拳で「おまえは既に死んでいる」と言われたような・・。
結果めでたく渡辺竜王が勝ちました。なんだか、すごくほっとしました。いずれ、チェスのように、コンピューターソフトに負ける日が来るのかも知れませんが、是非人間様の切磋琢磨で乗り越えてもらいたいと期待します。
世間の人からどんなに「前川さんって頑固ですねえ。これだけ実績が上がっているのだから、意地張らずに投資ソフトを利用しましょうよ。お金のことは任せて、人生を効率よく生きてみませんか」と言われる世の中になったとしても、私は絶対ロボットの言いなりで投資と付き合うことはしません。自分でやるから経験になるんです。「次はこうしよう」という知恵になるんです。私はロボットに投資を委ねることは絶対しません。