世界の工場であり、世界の消費地として期待される中国の1−6月期国内総生産(GDP)成長率(実質ベース)は前年同期比で11.9%増。5年連続の二桁成長が見込まれ、中国政府は景気の過熱を防ぐため金融引き締めを検討しているとのことです。深刻なのは、不動産や株式などのバブル化以上に、肉類などの食品価格まで上昇していること。中国政府は消費者物価の上昇率を3%以下に抑えることを目標にしていましたが、1−6月で3.2%上昇、6月単月では4.4%に跳ね上がりました。高級品・贅沢品の価格上昇は買わなければ済むことですが、生活に必要なエネルギー価格や食品価格の上昇は直接国民生活に影響します。
エネルギー価格、食品価格の上昇は中国など新興国だけの問題ではありません。我々の身近ですでに起きていますし、1昨日の米国議会では米国FRB議長バーナンキ氏が「エネルギーと食品の価格が上昇しているのは好ましくない」と語り、景気の減速だけではなく物価上昇も警戒する立場を強調しました。
ブラジルの国民はスーパーで大量に食料品などを買い込み、たくさんのビニ袋を用意し、それを小分けして買いだめするそうです。以前超ハイパーインフレの時代に「午前中にあったものが午後には品切れしたり、値段が高く訂正されている」事態に身につけた消費行動が今も残っているそうです。こうなると、お金よりもものの確保が優先されます。まさにインフレ。
特に日本のように資源を他の国に頼りっぱなし、肝心の通貨円の価値は下がりっぱなしで、国民が憂いて円以外の通貨を持とうとしている状況に、関心無さげの政府・日銀。
今回の新潟中越沖地震で部品供給に支障が出て車の生産がおぼつかない、危うい状況は、全ての資源を海外まかせ、通貨の価値も市場任せにしている、近未来の日本の状況かもしれません。海外からの資源調達の道が閉ざされたら、円安が行き過ぎ円の価値が減価し海外の物資調達に支障が出たら、という万一の日本の備えは十分なのでしょうか。それとも、インフレへの備えは国民一人一人の自己責任?個人的にはインフレが発生する前に、個人消費や設備投資に陰りが出て、インフレが長く続く事態には至らないと思いますが、インフレ懸念を生じさせる土壌に、特別手だてもせず、ただ流して見てきたとしたら、政府・日銀の無策を責められても仕方ないと思います。