今月の視点 2021年7月

米国金利上昇で私が注目する投資対象はブラジルレアル建て債券(2021年7月)

米国は金利上昇のきっかけ待ち
米国ではインフレを示す強い数字が続いています。米商務省が6月25日に発表した5月の個人消費支出(PCE)物価指数で、変動が激しい食品とエネルギーを除くコア指数の上昇率は3.4%(前年同月比)と、29年ぶりの高い伸びになりました。

パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長は、足元のインフレは「一時的」と、これまでと変わらぬ見方を示しましたが、テーパリング(量的緩和の段階的縮小)開始を行う要件の一つである雇用については、「秋には力強い回復が期待できる」と強調しました。

米10年国債利回りが1.5%程度の水準にとどまって上昇する気配がないため、マーケットの反応は落ち着いています。しかし、米5年国債利回りは、昨年の0.2%前後から最近では1%程度まで上昇してきており、5年国債利回りが10年国債利回りを支える形で、「すぐには上昇しないが大きく低下することもない」状況にあり、金利上昇のきっかけ待ち状態にあると私は考えています。

したがって、パウエルFRB議長が想定する雇用回復が顕在化するにつれて、5年国債利回りが突き上げる形で米10年国債利回りが2%を目指す展開に入り、金利上昇懸念からマーケットが混乱して大きく乱高下する場面となることが予測されますので、今から準備しておいたほうがよいでしょう。

金利妙味が出てきたBRL建て債
そんな混乱期に私が注目する投資対象はブラジルレアル(BRL)建て債券です。

米国金利の大幅な上昇が懸念される場面では、新興国への投資マネーが引き揚げられて通貨安が進行し、国内物価の高騰をきっかけに金利が急上昇しやすくなります。

しかし、景気回復でコロナ禍から人・モノの動きが日常に戻っていく過程で発生した金利上昇は長くは続かず、「円高の時に金利が高い外貨建債券に投資したい」という方には絶好の投資チャンスになります。

ブラジルの場合、2016年8月には14.25%だった政策金利を、2%まで引き下げる金融緩和で景気回復を図ってきましたが、資源価格・食料品価格の高騰で今年の3月から、すでに4ヶ月連続で政策金利を引き上げています。

これを受けて、ブラジル10年国債利回りは6.3%から9.15%まで上昇、1BRL=18円程度から22円程度へと長く続いた通貨安基調も落ち着いてきました。マーケットでは、まだ高い水準のインフレが続いているため、年内に政策金利をさらに2.25%引き上げて6.5%になると見ています。

したがって、この先もまだ金利が上昇する可能性があり、しかも「あのブラジルでしょ?」と多くの方がBRL建て債券への投資に慎重であるのは当然です。しかし、10%程度の金利があり、為替水準が落ち着いてきたことは要注目です。

BRL建て債券の価値は大きく上下するので、下がった時に投資しようと考えていた人も、その下げ方の大きさを見ると「もっと下がるかも」と躊躇してしまうのが普通です。そこでお勧めなのが、タイミングを測る投資を避け、投資信託を利用して積立投資で取り組むことです。そして実際に大きく下げる場面が来たら、積立額を増やす、または一括投資を検討するというのが投資チャンスを逃さない現実的な対応だと考えます。

一般に、価値が値下がりしているときは、「なぜ値下がりしたのか」の理由に縛られ、新規投資を躊躇してしまいます。つまり、政情が不安定、感染拡大が収まらないなど「ブラジルに投資できない理由」を考えてしまうのですが、それらはすでに価格に織り込まれ、割安な価値で放置されているのかもしれません。

私は政策金利の引き上げで利回りが上昇してきたBRL建て債券は投資に値する水準に戻ってきた、さらにブラジル10年国債利回りが10%を超える水準となり、1BRL=20円程度で投資できるなら、リスクに見合う水準になったと考えます。ブラジルは食物・資源が豊富な資源国でコロナ禍の景気回復で恩恵を受ける国であることも魅力です。

今回はあえてBRL建て債券という多くの方には馴染みのない対象を取り上げてみました。このコロナ禍で価値が上昇するものばかりに目が行きがちですが、その中で静かに価値が変化するものがあることをお伝えしたいと思いました。