今月の視点 2021年8月

チャイナ・ショックの再来?中国株式の急落もあるか・・

中国株式下落が懸念される背景

7月27日に発表されたIMF(国際通貨基金)の「世界経済見通し」によると、ワクチン接種で先行する米国の経済成長率は2021年予測が7%に上方修正された一方で、日本は相次ぐ緊急事態宣言などに伴い、経済活動が制限されたことから先進7カ国で唯一下方修正されました。

新興国ついては、新型コロナウイルス感染拡大の影響でインド、ASEAN(東南アジア諸国連合)5カ国の見通しが大幅に下方修正されました。加えて、いち早く景気回復を果たした中国の経済見通しも、公共投資を始めとする財政支援を減らしているため下方修正されて、アジアがコロナ禍での世界景気拡大の足を引っ張る見通しになっています。

これを受けて、7月の株式市場は、米国株式が一人気を吐く一方、日本株式は高値警戒感から頭が重くなり、アジア株式は先進国に劣後する展開が続いています。特に中国株式は、米中対立悪化懸念に加え、中国政府による規制強化を嫌気して株価が大きく下落する場面があり、2015年の「チャイナ・ショック」の再来を心配する見方も出ています。

「チャイナ・ショック」で、中国株式は2015年6月の高値から2016年3月の安値まで、半値程度まで大きく値下がりしました。

当時、高値警戒感があった中国株式が大きく下落した時に、「株式の売りを止めれば株価は下がらなくなる」と中国政府が強引に大株主の株式売却を禁じたり、輸出のテコ入れのために人民元を大幅に切り下げたりしたのがきっかけでした。

この株価下落を抑制する中国政府の対応を見て、「政府の判断で売却できなくなるかもしれない。売れるときに売っておいたほうがよい」と外国人投資家が中国株式の売却を急いだため、下落幅が大きくなったと言われています。

現在、中国政府は、インターネットを通じて個人情報を収集してきた中国大手ネット企業に対して締め付けを強化したり、不動産価格の値上がりや教育費の高騰を抑制するなど、中間所得層の負担を軽減して少子化に歯止めをかけようとする動きがあります。

例えば、6月30日にNY上場を果たした中国配車アプリ最大手の滴滴(ディディ)は、7月2日、国家安全上の理由で中国政府の審査が入り、株価が急落、企業の存続も危ぶまれる状況になっています。中国政府のひと刺しでNY上場の歓喜から突き落とされました。

また、中国では家庭教師などの学習支援サービス業界が新型コロナの感染拡大を受けて急成長しましたが、7月24日に、①学習支援サービス企業は今後、非営利団体として登録すること、②週末、長期休暇中に授業を提供することは禁止、③これらの企業は上場や外部からの資金調達を禁止する、との中国政府からの突然の発表を受けて、教育関連銘柄はパニックの中で大きく売られました。

これらの規制強化は、持つもの、持たざるものの資産格差を是正する中国政府の長期方針に沿うものです。マーケットには今後さらに規制対象が広がるのではと懸念が残ります。

昨日まで成り立っていたビジネスモデルが中国政府の突然のルール変更で土台から崩れる様を見た外国人投資家の間では、「中国株式は投資に向かない」とチャイナ・ショックの再来を心配する見方が出始めているのです。

 

  • 積立の対象としてアジア株式

上げ続ける相場もなければ下げ続ける相場もありません。株価は割安になれば、いずれは適正な株価に戻っていきます。そして、大きく値下がりした後ほど、大きな戻りが期待できます。新型コロナウイルスのワクチン接種が進むにつれ、ヒトやモノが再び自由に移動できる世界が少しずつ現実味を帯びてきました。

中国株式の下落は、世界の株式相場全体の割高さが修正されるきっかけになるかもしれません。中国株式の急落をきっかけに株式相場全体が割安に向かう機会がこの先にあったら、「高いところで投資しないでよかった」で済ませず、「割安に買えるチャンス」と検討することをお勧めします。

その際の投資対象は、中国株式単独は政治的リスクが大きいので、例えば、中国株式を含むアジア株式の投信を対象にして、積立投資から始めるのはいかがでしょうか。