今月の視点 2022年5月

金利高・円安メリットを享受するタイミング

4月22日の米株式市場では、ダウ工業株30種平均が前日比981ドル安と大幅に下落しました。パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長が、5月3~4日に開く米連邦公開市場委員会(FOMC)で、政策金利を前回(3月)の2倍の0.5%引き上げる選択肢があると発言したからです。

大幅利上げ予想が不安を助長

人によっては、「FRBがインフレ抑制のために利上げしていくことはわかっていたはずなのに、株価はなぜこんなに下げるのか」と不思議に思う方がいらっしゃるかもしれません。しかし、大幅な連続利上げを経験していないマーケットが神経質になるのは、自然な反応。先が見えなくなると不安が増幅するからです。

下図は、米10年国債利回りと米国政策金利、そしてドル円為替の推移です。2008年の金融危機後、景気回復のために政策金利を0.25%という低金利で維持し、景気回復に合わせて0.25%ずつ、マーケットが動揺しないように配慮しながら、時間をかけて政策金利を引き上げています。

今回は、もともと「利上げの必要はない」としていたFRBが、インフレ懸念の高まりから急遽インフレ抑制重視への政策転換を余儀なくされ、長期金利が先行して上昇しました。

年初の段階では、2022年は政策金利を0.25%ずつ4回程度引き上げるとの予想でしたが、長期金利が政策金利の大幅上昇を先読みして3%目前まで上昇すると、「政策金利0.25%ずつの引き上げでは足りない、0.5%、場合によっては0.75%以上の連続引き上げもあり得る」、直近では「長期金利は4%を目指して上昇していく」といった具合に、金利上昇の先行きがわからなくなってきました。

前回3月の利上げは、ロシアのウクライナ侵攻によりマーケットが動揺する中で注目されましたが、FRBが早々と0.25%の引き上げを匂わすことで動揺を抑えました。

今回、引き上げ幅を0.5%にしてしまうと、インフレの数字が落ち着かない限り、それ以降0.25%の幅に縮小することが難しくなります。つまり、5月以降、6、7、9、11、12月と続くFOMCで、0.5%以上の幅で複数回の利上げが行われる可能性が出てきたわけです。近い将来、短期と長期の金利水準が3%に並ぶ状態になるかもしれません。この場合、ゼロ金利の円から米ドルに替えると3%の金利が得られるようになるため、円安はさらに進みやすくなります。

高利回り・円安メリットを享受する

相場の動きは、行き過ぎて割高に振れるほど、逆に行き過ぎた割安に振れていく、といった振り子のような動きを繰り返します。私は米国10年国債利回りが0.5%まで低下した2020年7月に、「もし10年国債利回りが上昇するなら2.2~2.6%程度まで」と想定しましたが、現在の水準は、その想定を超えてしまい、さらに高利回りに向かっていることになります。

そして、1ドル=130円は行き過ぎだと思いますが、インフレ抑制を重視する米国と、いまだに利上げの必要はないとする日本のスタンスの違いを背景に、米国がインフレ抑制の目処が立って長期金利が低下するまで円安・ドル高は継続し、その期間の長さにより、1ドル120円を割り込む円高基調に戻るには、相応の長い時間が必要だと思います。

現状は、米国国債という安全資産でさえも3%程度の利回りが確保できる環境になりました。信用リスクを少し取ることで、米ドル建て債券で4%程度の確定利回りを手にすることも可能となり、外国債券投資が有効な投資対象として復活してきました。

これまで「円の将来が不安」と外貨投資を継続してきた方は、今後の金利上昇や為替の動きのタイミングを大事にしましょう。

まず、米ドルや豪ドルなど外貨建ての現預金・MMFを保有している方は、「3%以上であれば良し」として外貨建て債券への投資を検討しても良いでしょう。

また、本来であれば、外貨投資は為替水準に一喜一憂せず、「円以外の確かな資産作り」のため持ち続けることをお勧めしていますが、1ドル130円までもの行き過ぎた円安水準になれば、「これまで外貨投資を続けてきて良かった」と外貨の一部を円に戻して、円安メリットを享受し、再び、円から外貨投資を行う機会を探るのも良いと思います。