5%超えで米国債に投資妙味!いつまで続く?
長期金利の上昇要因に変化が・・
米10年国債利回りは、金融危機発生前の2007年7月以来となる5%を超える水準まで上昇してきました。さらに、米30年国債もまた5%を超える水準にまで上昇してきたことに私は驚いています。米国の長期金利がこの水準まで上昇することを全く想定していなかったからです。直近では、米国の長期金利はもっと大きく上昇していくという見方も出てきました。今回は、その可能性について、考えてみたいと思います。
金利の先行きを予測する際には、「イールドカーブ(利回り曲線)」の動向が多く用いられます。イールドカーブとは、債券の利回りを縦軸、償還期間を横軸でグラフ化したものです。その形状により、期間が長いほど利回りが高い状態を順イールド、逆に期間が長いほうの利回りが低いものを逆イールド、そして期間によらず同じ利回りになる状態をフラットイールドと呼びます。
順イールドは、景気の拡大やインフレ上昇など将来の金利が上昇すると見込まれるとき。逆イールドは逆に景気の減速や後退などで将来の金利が低下すると見込まれるとき。フラットイールドは景気が良くなるのか、後退するのかの先行きが読めないときに起こりやすい形状です。
米国は2002年3月からインフレを抑制するために政策金利を引き上げてきました。足元の金利を引き上げることで景気を冷やすための政策でしたから、期間の短い2年国債のほうが10年国債よりも先行して金利が上昇し、2002年7月には順イールドから逆イールドに転じました。
そして、政策金利を累計5%まで引き上げて、引き上げ余地に限りが見えてきた2023年5月以降は先行して上昇していた2年国債に10年国債利回りが急上昇し追いつく形でフラットイールドになってきました。2023年5月以前は、インフレ抑制を意図した政策金利引き上げの有無を材料に国債利回りが上昇。それ以降は、インフレ沈静化を導くため高水準とした金利を、いつまで維持するかの思惑で利回りが上下するステージに変わったといえるでしょう。
5%の金利で運用姿勢に変化
米国債の利回りは複利利回りです。つまり米国債の5%利回りとは米国が破綻しなければ毎年5%の利息が組み入れられた元本が増えていくということです。償還時には10年国債であれば元本は1.62倍。20年国債であれば2.65倍。30年国債であれば4.32倍(税金は考慮せず)に増えます。30年間もの長期で、毎年確実に5%の値上がり益が期待できる投資対象が思い浮かびますか? しかも、投資環境の変化に伴う手入れもいらず、放っておくだけで実現できるとは…。ですから私は、米国債という安全資産と思われるもので、この利回り水準まで上昇してきた状況に驚いているのです。
他方、米国債の利回りは米国における借入れの最低金利でもあるので、より高い金利で借り入れて投資している方の中には、金利負担に耐えながら今後も投資を継続すべきかに悩む方が多いことでしょう。
おそらくこの先は、借入れの返済を優先してリスク資産の現金化を急ぐ動きから株式等リスク資産の価値が下落する一方、現金化した資金の安定運用先として米国債等の高利回りを求める動きが活発になり、高止まりしていた長期金利が天井を付け、現在の5%の水準から3.5%辺りに向けて下落していくでしょう。金利は現下の水準から大きく上昇することはないと私は想定しています。
今後の投資環境のターニングポイントを予測するなら、米連邦準備制度理事会(FRB)の動きよりも、米国長期金利がどこで天井を打ち低下に向かうかを探るほうが参考になると思います。FRBは、政策金利を引き下げた後、インフレ再燃を理由に引き上げを再開するようなドタバタは避けたいので、リスク資産の価値が急落し、失業率の数字が悪化するなど、明らかな景気後退の兆候を確認できるまで政策金利の引き下げに動くことはなく、まずは長期金利の低下を見て、その先に遅れて政策金利を引き下げる、といった政策の転換があると考えるからです。