今月の視点 2023年10月

新NISAで外債に直接投資できないのは残念!

●新NISAの期限なし非課税に感謝

2024年から新NISAが始まります。従来のNISA制度(積立投資しかできない「つみたてNISA」と、株式など比較的幅広く投資が可能な「一般NISA」)に比べて、以下の点が改善されています。

  • 非課税投資枠が「つみたて投資枠」で120万円、「成長投資枠」で240万円、合わせて年間360万円まで大幅に拡大
  • NISA制度は恒久化され、非課税保有期間の期限は撤廃
  • その年ごとにつみたてNISAか一般NISAかの選択が必要だったが、新NISAでは、「つみたて投資枠」と「成長投資枠」の併用が可能(非課税保有限度額は合わせて1800万円。ただし、「成長投資枠」の限度額については1200万円が上限)

積立投資は「成長投資枠」でも可能なので、「つみたて投資枠」と合わせて年間360万円、毎月30万円までの積立投資が、新NISAでは可能になります。

新NISAを利用して運用した元本1800万円は、将来どんなに値上がり益が膨らんでも永久に非課税になる制度です。想像してみてください。たとえば2000万円の売却益が出たら、通常であれば2000万円の20%である400万円の税金がかかります。これが非課税になるなんて財務省の太っ腹、新NISAの誕生に感謝です。

●非課税枠使い切り計画を夢想

新NISAの取り組みで大事なポイントは、新NISAの期限なし非課税扱いのメリットを活かし、なるべく多くの含み益が期待できる投資対象を選ぶこと、そして、せっかくの「つみたて投資枠」「成長投資枠」を合わせた上限額1800万円を使い切る投資プランを立てることです。

そこで、私の頭に浮かんだのは、毎年240万円、「米国国債」に直接投資をして「成長投資枠」を使い切るプランでした。

しかし、現在のNISAの制度では投資信託を通じて債券に投資することは可能なのですが、債券に直接投資することはできないのです。

そこで「なぜNISAでは債券に直接投資することができないのですか」と金融庁に聞いてみましたが、公開している情報以外お答えできませんという返事でした。

NISAの投資対象から債券が外されているのは、これまでグローバルに債券利回りは低すぎて、投資家ニーズがなかったこと、債券の最少投資金額が比較的大きいので、少額投資のNISAには向かないなどの理由があったと想像します。

日本では、1%利回りというと額面100万円に対して毎年1万円ずつ受け取る単利計算なのですが。米国国債の利回りは複利計算です。額面100ドルに対して1年目は101ドル、2年目は増えた101ドルに対して次年以降も元利金が1%ずつ増えていく計算です。

例えば、20年米国債利回りは4.7%複利利回りなので、投資元本39.909に対して毎年4.7%ずつ増えていき、米国が20年後破綻していなければ、償還まで保有すると投資元本は2.51倍(39.909→100)になります。

2年米国国債の場合は期間が短いので複利効果が小さくなり、1.1倍(91.049→100)です。償還まで保有しているだけで、毎年確実に増えていく米国国債に新NISAを活用して直接投資する方法は、投資を苦手とする多くの日本人投資家に向いている投資対象だと私は思いました。

ただし、ここまで高利回りになって魅力的な投資対象になった米国国債。しかも、新NISAの「成長投資枠」が年間240万円、上限1200万円とまで増えれば、債券への直接投資を十分に検討できるようになりました。「新NISAでなぜ債券に直接投資できないのか」という投資家の声が高まり、早く投資対象に加わることを切に願っています。

●代替策としての債券投信積立

ちなみに、外債投資には為替リスクがあります。しかし、1ドル150円の為替で4.7%複利利回りの20年国債を購入し、20年後の償還時に1ドル120円の円高の為替になっていたとしても、円換算元本は2.005倍になります(税金は考慮せず)。

これまで株式主体の積立投資をしてきた方は、この高利回りの環境を活かして、信託報酬がかかってしまいますが、高配当、高利回りが期待できる米ドル建て主体の「リート」「ハイ・イールド債券」「新興国債券」を投資対象にした投資信託も、新NISAの積立銘柄として新たに加える検討もしてみてください。