今月の視点 2024年2月

結局わからない新NISAへの取り組み方

●新NISAは2つに分けて検討する


 「新NISAは年間の投資上限額が最大360万円に拡大されて長期的な資産形成に適した制度。活用しないのは損です」と聞いて、金融機関の窓口を訪ねたり、インターネットで調べた方から、「結局、何を選べばよいかがわからない」と聞かれることが今も多いです。

新NISAには、積立投資専用の「つみたて投資枠」と個別株式など幅広い対象に投資が可能な「成長投資枠」の2つが用意されています。

「つみたて投資枠」は前NISAの「つみたてNISA」の年間上限枠40万円が120万まで、「成長投資枠」は前NISAの「一般NISA」の年間上限枠120万円が240万円まで拡大し、5年という期限がなくなり永久になりました。

つまり、新NISAは新しいものではないので、「つみたて投資枠」と「成長投資枠」に分けて検討するとよいでしょう。

新NISAの「つみたて投資枠」では毎月10万円までの積立投資が可能ですから、その範囲内での毎月の積立投資を考えている方は「つみたて投資枠」の検討だけで十分です。「つみたて投資枠」と「成長投資枠」の両方を検討しなくてはならないわけではありません。

安く買って大きな値上がり益を目的に「成長投資枠」だけをどんな対象で取り組むことが適当なのかを検討すれば良い方もいるでしょう。

実際、これまでの新NISAの利用状況を見ると、全世界株式や米国株式を対象にしたインデックス投信で積立投資をされている方が多い一方で、成長投資枠を使って、「高配当と株式の値上がり益」を期待したJT、三菱UFJ、NTTなど個別株式に投資する方が多いという傾向には納得感があります。

「つみたて投資枠」の目的は長期で積立額の2~5倍になる大きな資産を作ること。一方、「成長投資枠」は短期間で大きく資産を増やすことを目的にしても構いません。

 

つまり「成長投資枠」は「現在が非常に割安な環境にあり、積立投資の継続よりも一括投資のほうが高いリターンを期待できる」と確信がある時だけ活用する。そういう対象が見つからないときは、この「成長投資枠」を「つみたて投資枠」に加えて積立投資の増額を検討し、次の割安な機会になるまで待つ、というのも選択肢です。

●コストだけではなく、過去の推移も確認しよう

そして特に申し上げたいのは、「どんなに大きな利益が出ても非課税」という新NISAのメリットを活かす対象は、大きな値上がり益が期待でき、積立投資のメリットも活かせる大きな値動きを伴う株式を主体にした投資信託だということです。投資で損をしたくないから値動きの小さな投資対象を選ぶ方がいますが、それなら、「大きな利益が非課税になる」新NISAを活用するのはもったいなく、特定口座での積立投資で良いのではないでしょうか。

積立投資は元本割れの時期が一時期続いたとしても、長く継続することで、いずれは割安なときに積立投資したものがプラスとなり、全体の利益へと転化するときがきます。一方、一括投資は高値掴みをすると時間をかけても価値が戻らないこともあり、一括投資の高値掴みは避けなければなりません。

私はコロナ禍から現在まで、買われる対象と関心なく放って置かれる対象が混在している環境が続いていると考えています。確実な収益の確保には、割高・割安が混在する環境では割高なものを避けて投資することが大事なんです。

投資信託には、指数に連動するインデックス型と指数を上回る成績をめざすアクティブ型があります。インデックス型は個別銘柄の割高・割安を考慮せず投資しますので、この環境下ではインデックス型ではなく個別銘柄を厳選して投資するアクティブ型の中から実績がある老舗ファンドを選んだほうが良いと私は考えています。

たとえば、日本株を対象にした投信で定評があるアクティブ型ファンド「コモンズ30ファンド」とインデックス型ファンド「eMAXISシリーズ TOPIX」のコロナ禍で大きく下落する前の2019年初からの基準価額の推移を見ると、急落前はさほど違いはありませんが、コロナ禍で急落から立ち上がる過程では大きくコモンズのほうがアウトパフォームしています。

アクティブ型のコモンズの信託報酬は1.078%、インデックス型のそれは0.44%と確かにアクティブ型のほうが高いですが、手数料を引いた後のリターンで大きな成果が残せれば問題なしと考える方には、アクティブ型の醍醐味を味わっていただきたいと思います。

参考銘柄としては、金融庁が定める基準を満たした「つみたて投資枠」の銘柄の中のアクティブ型投信から3つを挙げておきます。
キャピタル世界株式ファンド(DC年金つみたて専用)
コモンズ30ファンド
ひふみプラス です。

ただし、アクティブ型選びで注意が必要なのは、「アクティブもどき」の存在です。アクティブ型を名乗って高い手数料を徴収しておきながらインデックス型の実績を下回るものを選んではいけません。

例に挙げたように、相場の急落後はアクティブ型の強みを発揮する時期です。にもかかわらず、インデックス型に劣る動きをするものは避けましょう。