今月の視点 2024年3月

積立投資は損を抱えたときこそチャンス!

●新NISAを始めることが目的?

日経平均株価は2月22日に3万9088円で終え、1989年末に付けた3万8915円の高値を34年ぶりに更新しました。

株式市場の高値更新は日本だけではありません。世界主要国の上場株を対象にした株価指数「MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス(ACWI)は、47の国・地域別の指数で構成されたものですが、そのうち21の国・地域は2月に入って昨年来高値を更新し、8カ国はデータ算出開始以来の高値を更新しています。

こうした世界的な株高の環境で、これまで投資経験のなかった方から新NISAの話を聞きたいという依頼が続いていて、最近では特に「新NISAをやらないのは損」と焦った様子の方が増えてきたように感じます。

値動きのあるものに投資すれば、いずれ、損を抱えて不安になり、悩むときが来ます。そして、投資したものが大きな含み損を抱える事態が長くなると、「自分は投資に向かない」と自分を責め、日々の値動きに疲れ、投資しているものを放置してしまう方が珍しくありません。

私がいま心配しているのは、相談者の大半にとって、新NISAの利用そのものが投資目的と化していることです。そこで、そのような方には以下の話をします。

①「投資を始めること」を目的とした人は、損を抱えると、成果を得る前に投資の継続をあきらめてしまうケースが多い

②「10年先にいくらにしたい」といった投資の目的・目標額を設定すれば、どんな投資が適切なのかのイメージを作りやすくなる

③目標額が決まったら、一括投資だけではなく、積立投資を併用したほうが目標達成の確度が高くなる

例えば一括投資で100万円を3倍の300万円にするのは大変ですが、元本100万円の運用と、毎月2万円の積立投資(年24万円×10年)を併用すれば、運用の成果を考慮に入れずとも10年足らずで目標実現の可能性が見え、その先の「500万円にするにはどうすればよいか」など、今後の運用についての具体的なイメージを描きやすくなります。

●11年経っても元本割れだった

その話の次に、金融庁が発行する新NISAのリーフレットに「長期・積立・分散投資のシミュレーション」という図があり、これを示して説明します。この図は2002年1月から20年間、1万円を毎月積み立てた元本240万円を日本株式で運用した場合、世界株式で運用した場合の成果です。

元本240万円が20年後、510万円になった、786万円になったという数字に目が行きがちですが、大事なのは、2002年から積立投資を開始して、継続的に評価益が増えてきたのは11年後の2013年からで、それまでは元本割れ状態が続いていたという事実です。そして、その11年間の報われなかった時期を耐えて積立投資を継続してきた方が成果を手にしたという、もう一つの事実です。

2002年から2007年まで日本株式も世界株式も順調に上昇していました。順調に上昇したということは、積立投資で毎月高くなる株式を買い上がっていたわけです。そして、その後の株価暴落により、買い上げて来た元本に大きな含み損が発生し、その含み損を解消して元本を回復するのに、その後5年もかかってしまったのです。

●逆風時も継続する覚悟が大事

逆に言えば、2008年から株式相場が暴落していく中でも積立を継続し、安く放置されている株式を拾い続けた積立投資が、その後の大きな成果につながったとも言えます。

2002年の投資環境と同様に、現在のような株式市場が活況な時から始める積立投資は、その後、株価が暴落して評価損を抱える状況になった時にこそチャンスが訪れると考えて取り組むことが大切です。
積立投資を継続していれば損をしないという思い込みは捨て、①積立投資をしていても元本割れが長く続く状態があること、②積立投資を継続していて利益が出ていない環境は、投資対象が割安に捨て置かれている状態でもあるので、積立額を増やすなど追加投資を検討する時期であることを、あらかじめ理解しておきたいものです。