今月の視点 2025年2月

日銀が利上げを決定する絶好のタイミングだった

 

●追加利上げに踏み切った日銀

日銀は、1月24日に開かれた金融政策決定会合で、マーケットの予想通り、政策金利を0.5%に引き上げました。これは17年ぶりの高さです。

年初の段階では1月の利上げを予想する専門家は少なく、3月以降になるという見方が大勢でした。しかし、1ドル158円台に円安・ドル高が進行した1月14日、氷見野日銀副総裁が翌週の金融政策決定会合で利上げを議論し判断したいと講演で発言したことでマーケットの予想は一転。利上げの方向に傾きました。

今回の利上げ決定後、一時的に1ドル154円台までの円高・ドル安が進みましたが、マーケットが事前に織り込んでいたこともあり、これまでのように大きく為替が変動する動きは見られませんでした。

逆にもし日銀が引き上げを見送った場合はマーケットにサプライズを与え、1ドル160円を超えていく円安・ドル高に動くきっかけを作ったかもしれません。

日銀は、円安によって海外から輸入する原材料や製品の価格が上昇する、いわゆるコストプッシュインフレが個人消費や企業活動を抑制している状況を深刻に見ています。

現在のインフレの内容が、経済が活発になり、人々の収入が増えて、モノやサービスを買いたいという欲求から物価が上昇する需要超過インフレあれば景気が良くなる好循環で問題ないのですが、収入や売上が増えない中でコストが増えていくコストプッシュインフレの先には、不景気でありながらインフレが進むスタグフレーションになる可能性があるからです。

現在の日銀の主な役割は物価の安定、特に消費者物価指数(CPI)の前年比上昇率を2%に近づけることです。この先、景気が後退する懸念が広がれば、今度はデフレに陥らないように景気を支えるため金融緩和策が求められるようになります。

そのため、物価の安定を役割とする日銀は、景気が良い時期に政策金利を引き上げておき、景気後退時に引き下げる対応が取れるように備えたいと考える傾向があります。

今回の利上げのタイミングについては、時期尚早との声もありますが、日銀としてはマーケットを混乱させずに、粛々と利上げを進め、政策金利の下げ余地を広げることができたと言えるでしょう。

政策金利の引き上げを決めた後の植田日銀総裁の記者会見では、インフレ目標2%を持続的・安定的に実現できる見通しが立てば引き続き金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくと今後も利上げを続けていく方針を示しました。

しかし日銀が追加利上げを行っていくのは容易ではなく、以下に示した一定の条件が必要になると考えられます。

・円安が加速してインフレが深刻化する懸念が高まった時
・追加利上げしてもマーケットが混乱しない状況だと考えられる時
・米国の理解が得られること

マーケットが混乱している最中に日銀が利上げに踏み切ることはできません。そのため、トランプ新政権に移行後、マーケットが落ち着いている今のタイミングしかなかったとも言えます。

このように、政府も日銀も、為替、金利、株価などマーケットの動向と経済指標データをにらみながら政策を決定せざるを得ない状況にあり、今後も不安定な投資環境が続きます。

 

●株価の下落、円高を心配する方の選択肢、国内リート

こうした環境で株式よりもリスクが小さく、高い利回りを狙った投資対象として注目する方が増えているのが国内リート(不動産投資信託)です。

不動産投資に関心があるけど、専門知識がなく多額の資金を用意できない投資家でも、リートを活用すれば、小口の資金で高利回りが期待できる不動産への分散投資が可能になります。

2024年12月末現在、東証上場リートの予想分配金利回り(加重平均)は5.15%と高い水準にあります。

また、これまでの株価の動きと比較すると、リートは株式よりも先行して下落し(2020年から下落基調)、株価が大きく下落した後は株式よりも早く底を打って上昇する傾向があります。

今後の株価の下落や円高を心配し、異なる対象を探している方であれば、リートへの投資は検討する価値が出てきたと思います。