トランプ・ショックに身構え準備するFRB
注目されていた12月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で、米連邦準備制度理事会(FRB)は3会合連続の利下げを決定しました。一方、日本銀行は、3会合連続で政策金利の据え置きを決めました。
米国が0.25%の利下げを決めた一方で日本は政策金利を据え置き、日米金利差が縮小しました。円高・ドル安に進みやすい地合いなのですが、逆に、1ドル158円目前まで円安・ドル高が進行しています。
なぜなら、FRBは今回確かに利下げしましたが、2025年に予想される引き下げ回数4回の見方が2回に減り、更にパウエルFRB議長が「今後は利下げをさほど急ぐ必要はない」と強調したことで、今後の大きな追加利下げへの期待が薄れたからです。
そのため、米10年国債利回りは一時4.6%まで上昇し、日本10年国債との日米長期金利差は3.5%と大きく開いています。
円安・ドル高基調はいつまで続くのか?
1995年から2024年までの米国と日本の10年国債利回り差とドル円為替の推移を参考にすると、金利差が拡大する局面では円安・ドル高が進みやすく、金利差が縮小する局面では逆に円高・ドル安が進みやすい傾向が見えます。
現在は、2020年8月の0.6%程度を底に日米金利差が拡大し、円安・ドル高の基調が続いている最中です。
いずれ過去に見られたように、日米金利差が明らかに縮小に向かう局面に変われば、円高・ドル安基調に転換していく時期を迎えることになるでしょう。しかし、今のところ、その兆しは見えません。
米国株式市場ではこれまで、FRBは大きな景気後退を回避するため、2025年は政策金利を4回引き下げて景気を支えていくと、更なる株高を期待していました。
一方、米国債券市場は当初、株式市場と同様に政策金利の引き下げを期待して、米10年国債利回りは3.6%程度まで低下しました。しかし、インフレ目標2%の実現には時間がかかり、むしろ、インフレ再燃の可能性もありと上昇してきました。
株式市場はFRBの政策金利引き下げに、債券市場はインフレが再燃する可能性に注目している状況です。これは1月から誕生するトランプ次期政権が繰り出す政策によって、どちらに転んでもおかしくない状況の現れだと考えます。
2024年9月からFRBは、それまでインフレ退治のために続けてきた利上げ政策から一転、利下げに転じました。これは、インフレの鈍化傾向が見え始めたこと、労働市場の悪化に対する懸念が強まったことが主な要因です。
加えて、これは私の推測ですが、トランプ次期政権が繰り出す政策で金融市場が動揺したときには、これまでの政策金利を引き下げる対応だけではなく、逆に引き上げることも可能な余地を残すために、FRBは政策金利を早く妥当な水準まで引き下げたかったのではないでしょうか。
今後、インフレ懸念が発生すれば利上げも辞さずという構えを示せば、政策金利の大幅な引き下げを先読みして上昇してきた米国株式市場は動揺し、割高を修正する動きに、米国債券市場は金利上昇しやすい地合いになる可能性があります。それに伴って、2025年初はドル高・円安が進みやすく、1ドル160円を超える円安・ドル高で始まるかもしれません。
円安を大義名分に、日銀は利上げを断行したい
日本は、資源・食料品価格などの物価高騰を上回る賃金上昇が実現できていないため、日銀が個人消費・設備投資の減退を引き起こすかもしれない利上げに踏み切る際には、各方面の理解を得るのが容易ではない状況です。
しかし、1ドル160円を超えて大きく円安が進行しそうな局面であれば、国民生活を危うくする円安を牽制するためという大義名分のもと、これを利上げのチャンスと実行する可能性が高いと私は思います。
2025年初から、FRB、日銀がトランプ・ショックにどんな対応を取るかの思惑で金利・為替が大きく振れる可能性が高く、投資家は2025年のスタートから楽観・悲観に偏らず、どちらに転んでも対応ができる準備をしておいたほうがよいでしょう。