不動産投信は当初、不動産の値上がり益を期待せず、不動産から上がる賃貸収入を分配金支払いの原資とする2001年9月に誕生した金融商品でした。当時は不動産不況で不動産、建設業は構造不況業種となり、多くが生き残りさえ危ぶまれたときです。その危機を救ったのが、新たな不動産の買い手として登場した不動産投信でした。
しかし、その道のりは順調なものではなく、不動産の値上がり益ではなく、不動産の付加価値を高めるために、「地域を活性化するためには何が足りないのか」、「空室率を改善するため、テナントに喜ばれる作りをどのように工夫したらよいのか」、「テナントはどんな不満を抱えているのか」などの試行錯誤を繰り返し、注目されるようになったのは2004年に入ってからです。その後はどんどん、不動産投信の新規上場が増え、同時に不動産投信の株価は順調な右肩上がりとなりました。株価が上昇すれば配当利回りは低下します。私は配当利回りに魅力が無くなった不動産投信を投資対象からはずしました。しかし、その後も不動産投信の上昇が続きました。
不動産投信という名前が一人歩きして、不動産投信であるということだけで、どれもこれも上昇する。おまけに、短期的な値上がり利益を狙うという不動産投信まで、中にまぎれてくるようになりました。私は警戒しました。
そして今、東証リート指数はこの1ヶ月で2000から1500に急落しています。この急落で配当利回りは急上昇し、上は8%台、下は3%台となりました。本来の不動産投信への投資に近づいてきました。しかし、2005年から株式として上昇してきた過程があるわけですから、株式として売られすぎのところまで売り込まれる可能性があります。ここは配当利回りだけで選ぶのではなく、不動産投信の個別を吟味して投資の機会を探った方が良いと思います。ある意味で不動産投信は現在の新興市場と同じ。株価が下がったことで神通力がはげ、人の目に投資対象として再び注目されないものが混じっているかも知れません。本物を選びましょう。
不動産投信自体は投資の選択肢として重宝な存在としてあり続けると思います。