今月の視点 2025年8月

国内金利の上昇は日本に対する信認の揺らぎ

●国債が敬遠されて株式・不動産が買われている

2025年7月、日米間の関税交渉が一定の進展を見せ、今後、両国の経済関係が落ち着くならば、日銀が利上げを再開し、円高ドル安に向かうとの見方が広がっています。

国内金利が大幅に上昇すると、円高・ドル安に動きやすくなるのですが、現時点では円高の動きは鈍いままです。

2025年に入り、日本国債市場では金利が大きく上昇しています。背景には、「これまでのように日本政府にお金を貸しても大丈夫か」といった返済能力への疑念、すなわち信用リスクの高まりがあると考えられます。

実際、減税や給付金などの歳出拡大が進む一方で、政府は将来的な債務返済の道筋を示せていません。政治の現場では、「多少、国債発行が増えても問題ない」とする見方が主流となり、財政規律への関心は薄れつつあります。

こうした懸念の中、特に長期・超長期国債の利回りは着実に上昇しています。2025年7月25日時点では、20年債が2.552%、30年債が3.060%、40年債が3.348%と、いずれも近年の水準を大きく上回っています。

1970年代のような高インフレ時代とは異なり、現在は物価安定を前提にした環境にもかかわらず、利回りがここまで上昇しているのは、国債への信認の揺らぎを反映していると見るべきでしょう。

かつては、「日本国債ならデフォルトの心配はない」と広く信じられていました。しかし、特に20年以上先に償還を迎える超長期国債については、「発行残高が減らずに増え続けることが今後も許されるのか」といった疑問が、機関投資家の間で高まりつつあります。

マーケットは返済の意思だけでなく、能力にも目を向けるようになり、日本国債への信認の揺らぎが金利に上乗せされている形で織り込まれているのが現状です。

このような構造的な不安定さは、2022年に英国で起きた「トラス・ショック」にも通じます。当時、財源の裏付けが曖昧な大型減税策の発表で英国国債が急落し、金利が急騰。誕生したばかりの政権は短命に終わり、政策は撤回されました。

日本でも、返済の持続性が疑われ、格付け会社による国債格付けの引き下げが現実化すれば、同様に金利がさらに上昇し、金融市場全体が混乱する可能性は否定できません。

為替市場ではグローバルにドル離れの動きが強まっています。BRICS諸国や中東、欧州、東南アジアなどで、米ドルへの依存度を下げる流れが広まり、米国自身も近年ではドル高を望まず、自国優先の姿勢を強めています。かつての同盟国への配慮は影を潜め、容赦ない米国ファーストの条件提示が目立つようになってきました。

こうした振舞いは、長年かけて築き上げてきた基軸通貨としての信認や協調体制を、米国自身が傷つけているようにも見えます。

こうした国際的な背景の中、日本円への期待は高まり、ドルを売って円を買う「円買いポジション」が高水準に達しています。

にもかかわらず、ドル円は140円を割り込まず、円高が進みにくい状況が続いています。これは、国債と同様に日本円にも信認の揺らぎが存在していることの現れではないでしょうか。

注目すべきは、円を持つ際の投資対象に濃淡がある点です。

日本国債が敬遠される一方で、株式や不動産など実際に価値のある現物資産に買いが集まり、これが現在、株価や不動産価格が高値圏で推移している要因のひとつだと思います。

●0.5~1%は金利上昇の余地あり

今後の国内金利の展開を考えてみましょう。

7月14日、30年、40年の長期国債利回りは急騰し、特に40年債は3.5%台まで上昇しました。この時は米国など他国の国債利回りと比較して割安感が強く、投資家による買戻しが入りました(価格の上昇、利回りの低下)。

ただし、投資家は金利高止まりがしばらく続くことを前提としており、特に10年以上の国債については、利回りが低下しても買うタイミングを急ぎません。そのため、20年以上の国債は3%台、10年債は2%程度の水準で推移する期間が長くなると見込まれます。

一方で、2~5年国債の利回りは現在1%程度ですが、政策金利の引き上げ期待の高まりや長期国債との金利比較で2%を目指す展開を想定します。つまり、これらの年限の利回りは、現在の水準から少なくとも0.5~1%程度上昇する可能性が高いと考えています。

なお、2~5年国債は企業の社債発行や設備投資の判断などに影響を与える重要な指標でもあります。

日本は世界で最も低金利に慣れてしまった国であり、金利上昇に対する耐性が弱い国でもあります。

金利がない時代から金利がある時代へと移行した今、低い金利で資金調達して運用するといった、借金を前提にしたレバレッジ型運用は見直しを迫られています。キャピタルゲイン偏重からインカムゲイン重視と発想を転換し、資産を大きく減らさないポートフォリオを意識した運用が求められる時期に入っていると思います。