個人向け国債変動10年か、新窓販国債10年か
国債市場はすでに金利上昇局面に入り、10年債は1.6%台、3年債も約1%まで上昇しています。日銀が次の会合で利上げする観測が強まる中、金利がさらに上昇するのか、それとも急騰の反動で一時的に落ち着くのか、市場では見方が分かれています。
私は、10年債利回りが1%を超えた時点で、「1.7%を目指して上昇する」と予測していました。そのため、3種類の個人向け国債(変動金利型10年、固定金利型5年・3年)のうち、金利上昇局面では変動金利型の選択が有利と考え、これまで推奨してきました。
●変動10年か、新窓販国債10年か
最近では、10年債利回りが1.6%台まで上昇し、今後の金利上昇余地が限られるとの見方から、変動10年ではなく、固定5年を検討する時期かとの質問が増えています。
8月募集の個人向け国債の利率は、変動10年が0.97%、固定5年も0.97%と同水準となりました。
変動10年の利率は、10年債利回りを基準金利とし、「基準金利×0.66」で決定されます。今後、10年債利回りが現行水準以上に上昇せず、むしろ低下する可能性が高いと考えるならば、固定型で利回りを確定する選択は合理的です。
また、10年債利回りが「固定してもよい金利水準」と判断する場合は、「新窓販国債」の選択も視野に入ります。新窓販国債には、10年、5年、2年債があり、8月募集の新窓販国債の利回りは、10年が1.416%、5年が0.993%でした。
個人向け国債には、①0.05%の下限金利、②1年間の売却不可期間、③1年経過後は政府による額面買取保証、④額面1万円単位の申込み、⑤変動金利型の選択肢がある、といった特徴があります。
一方、新窓販国債は、①固定金利型のみ、②中途換金は市場価格での売却(元本割れの可能性あり)、③額面5万円単位の申込み、となっています。
個人向け国債変動10年は、金利上昇時に有利ですが、利率が10年債利回りの0.66倍に抑えられている点がデメリットです。
したがって、10年債利回りが償還まで保有するに足る水準に達したと判断する場合、変動10年ではなく、固定5年の選択に加え、新窓販国債10年も有効な選択肢となります。
なお、新窓販国債は証券会社や銀行などで購入できます(取扱いがない金融機関もあります)。
私は、10年債利回りの1.7%は2016年以来の高い水準であり、これ以上の大幅な上昇は見込みにくいと考えています。しかし、下記の理由により、現時点では、新窓販国債10年よりも個人向け国債変動10年のほうが適していると判断しています。
●預金金利を上回る国債利回り
現在の日本は、減税や財政支出に傾斜し、国債発行額を抑制していく方針を明示できていません。近い将来、財政への信認が揺らぎ、金利上昇・株価下落・通貨安のトリプル安や、日本国債の格下げ懸念を背景に、金利が急騰する可能性も否定できません。10年債は2%、20年債は3%を目指す展開も十分に想定されます。
そのような事態に備え、現時点では変動10年を選択し、金利が大きく上昇した際に、新窓販国債10年に乗り換える準備をしておいたほうが賢明だと考えます。
加えて、新窓販国債のラインナップに20年債を入れてほしいと強く願います。もし3%の水準に金利が上昇すれば、20年間、3%程度の利回りが確定できる20年債は、長期投資家にとって非常に魅力的です。
現在、預金金利の水準と比較しても、個人向け国債や新窓販国債の利回りが、安定した確定利息を期待する投資家にとって、見逃せない水準になってきました。この機会に、高利回りが期待できる国内債券への直接投資をNISAの対象とする制度変更も、是非実施してほしいと考えます。

