運用会社が被害者になっているように思います。投信保有者から成績不振をなじられた販売金融機関で自分で対処できないことがあれば、「コンプアライアンス上の問題があるから・・・」と自ら説明することを避けて、運用会社に「わかりやすいレポートを出せ」とか「投資家に説明するセミナーを開け」とか、丸投げするところが多いと聞きます。
本来、運用会社は直接投資家のクレーム対応を行う役割が主ではなく、まずは運用成績でプロとしての責任を果たすこと、そして運用経過を丁寧に説明し投資家に継続して取引してもらえるようにキチンとしたサポートを行うこと、そして新たな投資家を開拓するために、取扱い投資信託の魅力を訴えることだと考えます。
そういう意味では、最近のETFばやりをどう運用会社の人は捉えているのでしょうか?
「市場平均には所詮勝てない。実績を言われてしまうと恥ずかしい」と白旗なのでしょうか?
私は投資信託の醍醐味は、やはり自分には出来ないプロ仕事を期待できるアクティブ型だと思います。「市場平均並み、もしくは最初から市場平均にわずかでも上回る実績であればOK」というアクティブ型投信なら、存在する意味がありません。インデックス型やETFで十分です。
でも、それで運用会社の特徴が出せるのでしょうか?
たとえば「TOPIX連動の投資信託なら、野村アセットだけで十分じゃない?」と思っている投資家も多いのだと思います。
アクティブ型投信があるから、インデックス型投信の存在も引き立つのです。どこでも投資できるインデックス型ばかりしか提示できない運用会社は魅力がないです。
一方で販売金融機関。販売金融機関も単発での「これどうですか?」という案内の仕方をいつまで続けるのでしょうか?せっかく、販売できる金融商品の数も種類も増えてきたのに、ある時はリートばっかり、ある時はバランス型ばっかり、ある時は新興国通貨建て投信ばっかり。
それぞれの商品の特徴を理解し、投資家の現在保有している資産内容を見て、投資家にあった資産バランスの改善を提案する、本来販売金融機関がめざしている役割に、いつつけるのでしょうか。今、その役割までも、運用会社に投げようとしている風に見えます。
運用会社は自分の取扱商品には責任がありますが、販売金融機関の個々の投資家への細やかな助言までできるわけがありませんし、そんなことまで運用会社に任せよう、期待している金融機関なのであれば、投資商品を扱う金融機関であってはならないと考えます。
先日、ある運用会社の人から、取り扱っている投信についてのプレゼンを受けました。非常に興味深いプレゼンでした。純粋で、単純な、日本株のアクティブ型投信の話です。非常に懐かしい思いで聞いていました。「こんな泥臭い日本株式のアクティブ型投信が実績を上げて、投資家の支持を集める投資信託に育ってくれたらなあ」と思いました。
「こんな投資信託なら、あの人に話したらどう感じてもらえるかなあ」と聞いた人間が投資家の顔を浮かべられる。それが販売金融機関の本来あるべき投資家への情報伝達の流れではないでしょうか。それには運用会社が喜々として取扱商品の特徴を説明し、販売金融機関が喜々として話に聞き入り、販売金融機関が喜々として投資家に使い方を説明する。こうした喜々として語る、語り部にあるかということが大事なのではないでしょうか。
以前株式投資の話でも同じ事を書きましたが、投資の語り部が余り見当たりません。投資自体が好きでない、投資の話は苦手だと思っている人間がいくら時間をかけて話しても相手に投資の楽しさや意義は伝わりません。語りつないでいく人の問題であり、人が作ってくれたレポート内容の良し悪しではありません。最近、「是非内容について聞いて確認してみたい」と思える金融商品に出会うことが無くなり残念です。どれもこれもつまらない。これが正直な感想です。