個人向け国債の関心高める税制優遇に期待

個人向け国債の関心高める税制優遇に期待

●金利上昇・円安進行が続く背景

日本の金融市場は今、政府のかじ取り一つで金利・為替ともに行き過ぎた金利上昇・円安進行に突入しかねない、極めて緊迫した局面を迎えています。

これまで政府・財務省は、円安進行や金利上昇を抑制するために「為替介入」を繰り返し、市場に対して「赤字国債を発行して財源に充てるようなことはしない」といった牽制を続けてきました。
しかし、こうした牽制にもかかわらず国債利回りの上昇に歯止めがかからないのは、日本の財政の行く末に対する市場の不信感を拭えないからです。

結果として、10年国債利回りは2.8%、20年は3.6%まで急上昇し、5月の大型連休中に11.7兆円もの巨額の為替介入を行っても、為替は再び1ドル160円台に迫っています。

金利が上昇すれば国債価格は下がり、それを大量に抱える国内の銀行や生命保険会社は含み損の拡大を恐れて国債への追加投資に極めて慎重になります。

このように、国債の最大の買い手だった日銀が買い入れ額を減額する中で、国内の機関投資家たちも身動きが取れなくなっている。この「買い手不在」という構造的な需給の歪みこそが、金利上昇と円安が止まらない理由です。
つまり、これまで政府の行ってきた牽制は対症療法に過ぎず、今本当に求められているのは、国債市場の需給を根本から改善する政策です。

●早急に求められる需給の改善策

こうした危機的な状況において、5月26日に開催された財務省の「国の債務管理に関する研究会」の内容は、非常に意味があるものでした。

個人向け国債のラインナップに、大きく金利が上昇した「20年超長期債」や物価上昇がプラスになる「物価連動債」を追加する検討や、2026年末の「個人向け国債プラス」の名称刷新と新窓販国債との統合は、家計で眠っている現預金1100兆円もの個人マネーを国債市場に呼び込むきっかけになり得ます。
預金金利が0.5%程度にとどまる中、10年国債利回り2.8%程度は個人にとって十分に魅力的な水準です。

この莫大な個人マネーがスムーズに国債市場にシフトする仕組みを整えることこそが、国債の信認を高め、円という通貨の価値を底割れから守る、何よりも力強いエンジンとなります。

しかし、極めてもどかしく、強い緊迫感を覚えざるを得ないのは、これらはまだ「検討段階」であり、今この瞬間の危機に対して即効性のある具体的な政策になっていないという点です。

国民の関心をさらに高め、一刻も早く即効性のある政策にするには、既存制度(NISA・相続税特例)を応用した以下の税制優遇を付与すべきと考えます。

①個人向け国債をNISAの対象に加えること:20年超長期国債利回り3.6%は、長期投資・資産形成として十分に魅力的な水準です。これを投信などを経由することなく、ダイレクトに非課税枠で投資する仕組みが必要です。

②超長期保有した個人に画期的な税制優遇:たとえば、「2027年中に期間20年超長期国債を買い付け、償還を受けた資金は相続資産の課税対象から除外する」といった特例措置です。

政策の遅れは、マクロ経済全体の機能不全につながります。生命保険会社や銀行など機関投資家は、過去の金利上昇による既存債券の含み損や、2026年導入の新たな資本監督基準(ESR)への対応から、新規投資に慎重にならざるを得ない状況だからです。
だからこそ、政府は需給を改善する具体策を早急に打ち出す必要があります。本来は国債利回りが上昇の目安を失う前に着手すべきでしたが、今からでも遅くありません。

個人マネーのシフトが明確になれば、金利上昇のピークが見え、これまで投資に躊躇していた国内機関投資家も安心して超長期国債への投資を再開できます。政府・財務省の速やかな英断を期待したいところです。