「金融商品取引業者の役職員はもっぱら投機的な利益の追求を目的として売買等を行うことを禁止する」という法律により、金融商品取引業者は信用取引・オプション取引・外国為替証拠金取引などの行為が禁止されています。
理由はこのような売買は金融商品取引業者の経営を不健全にするおそれがあるからというものです。
私はいつも「これって、変」だと思っています。金融の知識も経験もあるだろう金融商品取引業者に開放すると財務の破綻懸念があるという理由で止めておいて、何故一般の人には「自己責任で自分から選択するのであれば認める」という理屈が成り立つのでしょうか?
金融商品取引業者に信用取引を自由にやらせると不正行為を働く可能性が高いから止めると言うのなら、まだ理解できます。それは、事後的な処理として、発覚後は不正行為を重く処罰すればよいと思います。
しかし「損をして、本業である金融商品取引業者としての役割が果たせなくなるかも知れないリスクの高い取引だから開放しない」という理由であれば、何故一般の人に対しての開放を野放しにしておくのでしょうか。
信用・オプション取引は取扱注意の金融商品であって、投資の道具として問題があるわけではないと考えます。もっぱら投機的な行為で使えば財産を大きく損ねますが、リスクをわきまえた運用が出来る人が使えば効率アップの手段にもなります。
「勧めている人がリスクがあるからやってはいけないと止められているものを、よく人に勧めるね」。これが常識ではないでしょうか。もし必要な投資ツールであると判断するなら、不正行為の罰則を厳しくして金融商品取引業者にも開放し、正しい使い方の普及に努めるのが本筋ではないでしょうか。
今証券取引所、金融機関、運用会社は、相場停滞で個人取引が縮小しているため、信用・オプション取引の対象を増やしたり、ETFなど個人投資家が興味を持ちそうなものの品揃えを増やそうと一生懸命ですが、品揃えを増やすことが相場の活況につながるのでしょうか?個人投資家は買いたいものが見つからないから、相場に参加しないのでしょうか?
たとえば、ETF(指数連動型上場投資信託)。最近は外国のETFを取り扱う金融機関が増えてきました。ETFは投資信託よりも信託報酬などのコストが低いことで注目されていますが、いざETFを買おうと店頭で話を聞くと、投資家の質問に答え、まともに対応できる人がいません。
それではとインターネットで調べると、その金融機関が取り扱っているETFにどんなものがあり、そのETFがどんな内容であるかを、初心者程度の理解でもやさしく説明できているところはありません。
一番投資家が関心を持つコストについても、「信託報酬、売買手数料はいくらかかるのかな」とあちこち見ないとわからない不親切なところが大半です。
品揃えを増やそうと考えている人は一度自分でETFを買おうと実際チャレンジしてみてください。「面倒くさいなあ。これでいいやあ」と、途中で調べるのが面倒になって適当なものを選んでしまうのがオチだと思います。ただ店頭に並べているだけの状態で、とても「初心者の人にも関心を持ってもらいたい」という工夫は見られません。
上場不動産投信(Jリート)もそうなのですが、「投資家が理解して投資するために、何がわからなくて躊躇しているのか」を理解し改善していくことの方が、品揃えの充実よりも大事なのではないでしょうか。最悪なのは、「品揃えをしたけど結果人気が集まらなくて、コストもかけられず、放ったらかし」と、メンテナンスもせず、尻すぼみになる金融商品の粗製濫造になることです。