注目されていた2月米国雇用統計の数字が2ヶ月連続のマイナス。米国景気は後退局面に入ったとの見方が広がり、ドル独歩安、ドル円は一時101円40銭まで円高が急伸、ニューヨークダウ終値は12000ドルの大台を割り込んで引けました。
市場では景気浮揚策として次回米国FOMCでは政策金利1%の大幅引き下げを織り込みにいっています。私はこれまでの「FRBが政策金利を引き下げて景気浮揚を期待する」という段階から、住宅市況や雇用などに絞り込んだ政府の具体的な浮揚策を期待する次の段階に移ったと思います。
期間2年の米国国債の利回り水準はすでに1.5%。現在の政策金利が3%ですから、市場では政策金利の引き下げ幅1%以上の引き下げを織り込んで動いているわけです。つまりこれまで政策金利を「大きく下げろ、早く下げろ」と期待してきたマーケットが引き下げ幅に対して控えめな予想をしているという変化が見えます。
これだけ短期間に政策金利を下げてきても景気浮揚の兆しが見えず。ここで1%以上政策金利を引き下げても、おそらく景気浮揚に目立った変化が起こるとも思えない。むしろここで1%も政策金利を下げてしまったら、「政策金利を引き下げて景気浮揚を期待する」というカードをなくしてしまう方が相場の先行きを暗くしてしまうという懸念が出始めた表れではないでしょうか。
したがって、これからの主役はFRBではなく、具体的な景気浮揚政策を期待される米国政府に移り、FRBには資金が目詰まりしないように流動性の確保が主な役割と言えます。実際、昨日FRBは金融市場への資金供給を拡大し、今後も資金の流動性を確保すると発表すると、101円40銭まであったドルは一気に103円台まで回復しました。
頭の良い人はいるのだなあと思ったのは、「政府は非常に低水準になった2年米国国債を発行し、それを原資にして住宅ローンの借り手に低利で融資すればよい」という話があるそうです。こうすれば、税金を投入せず、住宅ローンの延滞を防ぐことができる。おそらく、この手の話はいろいろアイディアとして出始めているのでしょう。具体的な政府の提案を期待したいものです。
一方で同じ立場であるはずの日本銀行、日本政府は情けない状態です。何一つ自分では決められない。民主党は元日銀副総裁だった山口氏を武藤氏の代りに日銀総裁候補として推薦するという話を聞きますが、日銀の役割を知り尽くしているはずの山口氏がこんなに市場を混乱させるようなタイミングで「自分は武藤氏よりも日銀総裁に適任だ。やりたい」という強い意志が本当にあるのでしょうか?私にはとてもそのように山口氏が考えているとは思えません(もちろん、私は山口氏との面識はありませんが)。もし山口氏本人の意思確認もなしに、「山口氏が適任と思っただけ〜」という乗りで反対しているのであれば、民主党の反対は無責任であり、いたずらに市場を混乱させた罪は非常に重いものです。
まさかだと思いますが、都知事選のように「候補者を立てられませんでした」とみっともない幕引きにならないように。日本のマーケットが無視され、関心のない状況に追い込んでいるのは、間違いなく政治の責任です。