本日の日経記事で「投信の信託報酬、販売奨励金化に注意」という特集記事があります。販売手数料は販売会社だけが受け取るものですが、この販売手数料を取らない「ノーロード投信」が増えるにつれて、その分、実績に関係なく、運用会社、販売会社、信託銀行が受け取る信託報酬(代行手数料)の販売会社の取り分が増えている傾向が見えます。
販売手数料を下げて、なくして、お得感を出し、その分代行手数料で取り返す。そんな思惑が見える投資信託もあります。
最近のように投資信託の実績が不振になると、否が応にも投資家の不信感が高まります。お得感をいかに見せるかの努力よりも、納得感のあるサービスの質を評価してもらう販売金融機関側の努力が喫緊に求められています。投資信託の実績を上げるには、リターンを伸ばすか、コストを下げるかです。リターンを伸ばすには、新たにリスクをあえて取らざるを得ませんから、結果は水ものです。
また「コストを下げろ」と要求しすぎると、運用会社の士気が落ちたり、必要なサービスまで切り捨てられてしまうのは、長い目で見て、資金を託す投資家にとっても良いことではありません。
したがって、我々投資家は、投資信託関係者にコストに見合ったサービスを求めることが大事だと私は思います。
後ほど改めて、告知させていただきますが、「いま債券投資が面白い」に続き、「あなたの投資信託選びは間違ってないか?」という投資信託の本を9月に日本経済新聞出版社から出版する運びです。この本では、「自分にあった投資信託を選ぶために、販売金融機関には手数料に見合った仕事をしてもらいましょう」という案内をしています。多くの人が、「○○銀行の相談コーナーは頼りになる金融機関かな」、「○○証券は投資のプロ?」とワクワクして相談してみたくなる仕掛けを書きました。金融機関の窓口の人にとっては、当初は迷惑な本だと思われるでしょうねえ。だけど、最終的には金融機関の窓口の人にとっても助けになる本になると思います。
私は金融機関の窓口から「そんなにサービスを要求されたんじゃ、この手数料ではやっていけない」という悲鳴があがることを期待しています。「当社の手数料をいただいて行うサービスの範囲はここまでです」とサービスの範囲を明確にするという反応も良し、投資家の目線に立ち、会社を挙げて店頭相談の能力を高め積極的に対応しようとするも良し。
「手数料が高い」という声に耳をふさいで「行けるとこまで行け」は許されないムードにあります。せっかくだから、金融機関には「間に入ってもらって助かります」と投資家から感謝される仕事をめざして動いてもらいましょう。
金融機関にとっても、自分で考えられる投資家が増えることは望ましいことなのですから。