信用リスクの大きさで金利に差が出るとき!!

 「格付けはあくまでも参考であり、それを信じて損をした場合は責任を負えません」という格付け会社の格付けを過大に信じて損失を被った機関投資家。金融のプロが「流動性が高く、安全だ」という言葉を信じて仕組み債を売りつけられた機関投資家が説明不足で訴え、売りつけた一流外資系金融機関が元本での買取を余儀なくされ、思わぬ損失を計上せざるを得なくなった。
 「何を信じて投資すればよいのか」と疑心暗鬼になる投資家。当たり前の流れではありますが、そうなれば、シンプルでわかりやすく、流動性の高い、しかも元本確保の確度が高い「先進主要国の国債」に資金が集まり、金利は低下します。しかし一方で、国債よりも、「わかりにくい」、「流動性が悪い」、「信用リスクがある」度合いに応じて、社債、サムライ債の金利はむしろ上昇しています。
 金余りの時期は債務不履行(デフォルト)なんて、夢にも思わず、約束された元利金がきちっと支払われることに疑いを持ちませんでした。格付けA格以上あれば国債と同等の安心感をもちましたし、実績があってもなくても取引所が上場を認めた株式やJリートはどれも同じだと思っていました。
ところが、いったんそれを疑う世の中になると、とりあえず「一番安全なもの」を目指します。
 中長期での投資を目指す投資家は、「わかりにくさ」、「流動性が悪い」、「信用リスクがある」の度合いを見て、割安な金利確定ものを探す幅が増えていく好機としてとらえたらよいと思います。きっと、「そこまで臆病にならなくても、中長期で見たら大分割安な水準じゃない?」と割安で放置される投資対象が見つかると思います。ちょっとしたリスクを取ることで、懸案だったゼロ金利の預貯金からのリターンアップが可能になる機会です。
 今週の日曜日から、日経新聞の「投資入門」で「債券投資の基礎」というシリーズを取り扱っていきます。今回は債券の仕組みとメリット。私は、このシリーズで多くの人が債券に関心を持つきっかけになってくれれば願っています。私の「いま債券投資が面白い」にも書きましたが、債券は「預貯金の低金利をどうにかしたい」と考える預貯金者がまず検討するといい、投資対象です。それを知ったうえで、それに物足りない人が株式や不動産など更にリスク商品へ向かうのであれば、何の問題もありません。預貯金者が債券投資を知らずに、投資=株式、リスク商品という思いこみで、追い立てられて投資に飛び込んだ結果の悲劇が後を絶ちません。
 日経新聞の人やマネー情報誌の人の中には、「本当は債券投資について、外債投資について、特集を組んで紹介したいんです。それは今の時期だからこそ、大事な情報だと考えています」と言われるかたが多くいらっしゃいました。本当は「預貯金者に債券をどんなふうに利用したらよいか」という実践について紹介したいのです。しかし、債券の話をする場合、「債券の仕組みや特徴」の話をまずしなければならないのがネックになっていました。この「債券の仕組みや特徴」の話は、お勉強の話が主になり、読んでいて退屈。専門用語が多く、その先を読む気にならない。通常の紙面では文字数が足りないため、実践の話まで到底行き着くことが出来ず、結果大抵は投資家にとって、つまらない特集になってしまいます。
 結局、債券の話は、「株式」と「投資信託」の陰に隠れ、ついでの金融商品の位置づけのままなのです。これを非常に残念にずっと思っていて、あえて「債券投資の実践」にスポットをあてて書いたのが「いま債券投資が面白い」でした。
 今回日経新聞は、複数回のシリーズを通して、いままでの特集では書き切れなかった点にもメスを入れて取材をされるようです。今回の特集が「預貯金に一番近い性質を持つ「債券」に興味を持つのは自然な流れだ」と受け止めて、興味を持っていただくきっかけになればと願っています。