以前の日立、以前の日産は「良い製品は売れるはず」と、消費者のニーズからずれた商品を作り続け、その地位を落としていきました。家電製品や車であれば、他社製品との機能や価格の比較ができ、消費者は判断しやすいものです。しかし金融機関が販売する金融商品は、他の金融機関で扱う、どんな金融商品と比較して検討したらよいかがわからず、その金融機関の商品ラインナップから選ばざるを得ない投資家の方が多いでしょう。
以前の金融機関のように、絶対の信用があった時代ならともかく、現在のように、預金を扱い、国債を扱い、投資信託を扱い、保険まで扱い、「相談に行ったら何を売り付けられるかわからない」と、証券会社と同じ「何かを売り付ける業者」として見られるようになった昨今では、特に丁寧な相談窓口機能であるかを点検しなければなりません。
「私どもはグループを上げてお客様のお役に立ちたいと思います」。
「あなたたちはグループを上げて私を食い物にしようとしているんですか?」と声が上がるぐらい、不信感は高まっています。
日興コーディアル証券では支店を減らし、残した支店のコンサルティングの質を高め、株式などの発注は極力インターネット取引やコールセンターに誘導するという方針を立てたようです。
「支店のコンサルティングの質を高める」とはどういうことを行うつもりなのでしょうか?興味があります。おそらく「コンサルティングにより付加価値を高め手数料が取れる営業推進をする」という意味なのでしょうが、現場の人は具体的にどんな仕事ぶりが期待されているのか、ピンと来ているのでしょうか?「コンサルティングの質が高い」と感じてくれるのはあくまでも投資家。「コンサルティングの質が高いでしょ」と投資家に押し付けることはできません。
投資家との不信感の溝を埋める第一歩は対話を増やすことしかないと思います。いくら商品の品揃えを充実させても、金融商品は「いろいろありますから、勝手に選んでいってください」という売り方には限界があります。