今月の視点 2025年12月

巨大テック企業の社債発行と投資家への影響

AI投資と資金需要

米国の巨大テック企業が過去に例のない規模で社債を発行しています。「借金をしない」イメージのあった企業が社債発行に踏み切ったことで、債券市場全体の金利を押し上げ、他企業の資金調達を難しくする「クラウディング・アウト(資金の締め出し)」の懸念が高まっています。

アルファベット、メタ、アマゾン、オラクルなどは従来、潤沢な内部資金で投資を進めてきました。しかし生成AI開発競争の激化により、数兆円規模の資金が必要となり、内部資金だけでは賄えなくなっています。直近数か月でも主要4社が合計約900億ドル(13兆円超)の社債を発行しており、今後も継続すると見られます。

金利上昇の波及効果

こうした多額の資金調達は債券市場全体に影響します。例えばメタは40年満期の社債を年利6%前後で発行し、市場金利を押し上げました。最も影響を受けるのは電力・ガス、水道、鉄道などのインフラ企業です。これらは安定した長期資金調達を必要としますが、利益率が低いため高金利を提示できず、資金調達を超長期から中長期へシフトせざるを得ません。結果として中長期金利も上昇し、信用度の低い企業への投資姿勢は一層厳しくなり、デフォルト懸念が強まります。

個人投資家が注意すべき点

この環境下では個人向け社債も高金利で発行されるケースが増えています。国内ではソフトバンクグループが発行額5千億円、期間7年、利率3.98%で個人向け社債を起債し話題となりました。魅力的に見える一方でリスクも伴うため、投資家は次の点に注意が必要です。

  1. 金利と信用リスク
    高金利は返済リスクの裏返しです。金利だけに注目せず、企業の財務状況や将来性を確認することが重要です。
  2. 長期投資なら国債を優先
    投資期間が10年以上なら、社債より米国債や日本国債など安全性と換金性の高い資産を中心にする方が安心です。社債は長期ほど売却が難しく、格付け低下のリスクも高まります。個人的には40年・6%の米ドル社債より、20年以上で4.6%でも償還まで安心して保有できる米国国債の方が適していると考えます。
  3. 流動性の確認
    社債は途中売却時に買い手が見つからない可能性があります。特に長期債ほど流動性が低いため「換金のしやすさ」を検討することが大切です。債券投資で安心を重視するなら「償還までデフォルトのない発行体か」を第一に考えるべきです。例えば、ソフトバンク社債が7年間デフォルトせず利率3.98%なら、リスクに見合うと判断できる投資家にとって検討の価値があります。

AI競争による資金需要の高まりはテック企業だけでなく債券市場全体に波及し、インフラ企業や信用度の低い企業の資金調達を難しくしています。個人投資家にとって高利回り社債はチャンスですが、「高金利=安全」ではないことを前提に、信用リスクや流動性を慎重に見極め、国債など安全資産を軸に据え、社債投資は補完的に位置づけるのが望ましいでしょう。