今月の視点 2026年1月 新春おめでとうございます

高市政権が掲げた「責任ある積極財政」はマーケットに受け入れられるのか!!

2025年末、日銀は政策金利を0.75%に引き上げ、米連邦準備制度理事会(FRB)は3.75%へ引き下げ、日米金利差は着実に縮小しました。

通常であれば円高・ドル安に向かうはずの環境にもかかわらず、円安基調は続き、長期金利の指標である10年国債利回りはついに2%台へと上昇しました。

この現象の背景には、2025年10月の高市政権誕生以降、政府が掲げる「責任ある積極財政」の行方をマーケットが慎重に見極め始めたことがあります。政策金利の引き上げは短期的な材料に過ぎず、むしろ投資家の関心は、中長期的な日本の財政運営と国債需給の整合性、そして成長戦略の実効性へと移っています。

さらに、円安と長期金利上昇を後押しする構造的な要因も存在します。日本企業の海外投資拡大、経常黒字の縮小、そして2024年3月に日銀が長期金利のコントロールを終了し、金利は政策ではなく、マーケットの需給と期待で決まる「本来の姿」に戻ったことが、金利上昇と円安進行を促しています。

日本国債市場は潜在的なリスクを抱えた転換点にある

現在の日本国債市場は大きな転換点を迎えています。10年以上の長期ゾーンの利回りは、今後の政策金利引き上げを相当織り込んだ水準に達しています。10年国債は2%、20年国債は3%まで上昇し、過去の水準や他国の国債利回りと比較しても、償還まで保有する利回りとして十分に魅力的な水準になっていると考えられます。

しかし、この水準を超えて金利上昇が加速すると、マーケットが「妥当な金利水準の目安」を見失うリスクが生じます。

長期金利は一度「どこまで上昇するのか」という目安を失うと、ファンダメンタルズでは説明できない水準まで行き過ぎることがあり、これは日本にとって大きなリスクです。

財政赤字の拡大や国債増発への懸念が続く局面では、海外の投資家が日本の財政に不安を感じ、国債を売る動きが広がりやすくなります。こうした不安が一気に高まると、合理的な範囲を超えた「恐怖心理による金利急騰」を招く恐れがあるからです。

マーケットが最も注視しているのは、積極財政が「日本の潜在成長率を高める投資」なのか、単なるバラマキなのか、という点です。高市政権は、従来のPB(プライマリーバランス)黒字化目標に代わり、「債務残高対GDP比」の低減を重視する姿勢を示しています。

もし、サイバーセキュリティ、防衛、AI、半導体といった戦略分野への投資が実を結び、「名目GDP成長率>長期金利」の構図が描ければ、マーケットは財政拡大を肯定的に受け止めるでしょう。しかし、政策の優先順位が曖昧で財政規律の道筋が不透明になれば、かつて英国で起きた「トラス・ショック」と同様の事態が懸念されます。

日本国債が売られ金利上昇が加速し、海外への資金流出が円安を招き、株価も急落する「トリプル安」の連鎖です。

「高市ショック」が発生するリスクシナリオもあり

日本国債市場は世界最大級であり、ここが動揺すれば世界の債券市場にも波及します。
私は10年以上の国債利回りは今後のさらなる利上げを相当に織り込んだ水準まで上昇しているため、現時点では日本国債の大幅な金利急騰が世界にショックを与える「日本ショック」が発生する可能性は高くないと考えています。

しかし、2026年は、政策とマーケットとの緊張関係が最も高まる年となるでしょう。高市政権がマーケットとの対話を軽視し、財政拡大の「果実」を示す時間がかかるほど、マーケットの厳しい洗礼を受け、トラス・ショックの二の舞になる可能性が高まります。

リスクシナリオとして、もし高市政権の「責任ある積極財政」にマーケットがノーを突き付けた場合、10年国債利回りは3%を目指す展開も十分にあり得ると予測します。