単利と複利が生む“20年後の景色の違い”
──日本国債と米国国債の投資妙味をどう考えるか──
金利や債券投資の話は難しいと感じる方が多いのですが、投資判断の根本にある考え方はシンプルです。それは「利回りには単利と複利の2種類がある」という事実です。この違いを理解しないまま金利を比較してしまうと、投資の魅力を正しく判断できません。今回は、フラット35の20年固定金利住宅ローンと米国20年国債を例に、単利と複利がどれほど大きな差を生むのかをわかりやすく整理します。
●単利と複利は「増え方の仕組み」がまったく違う
単利とは、元本に対して毎年一定の割合で利息がつく計算方法です。日本国債の利回りはこの単利で計算されます。たとえば、100万円を単利2%で運用すると、1年後は102万円、2年後は104万円。増え方は毎年一定です。
一方、複利は利息にも利息がつく“雪だるま式”の増え方をします。米国国債をはじめとする海外主要国の国債は、この複利で利回りが計算されます。
同じ100万円を複利2%で運用すると、1年後は102万円、2年後は104万400円と利息が利息を生み始めます。
つまり、同じ「2%」という数字でも、単利と複利では20年後の結果がまったく違うのです。
フラット35の20年固定金利を2.0%とすると、元利均等返済の総支払額は元本の約1.21倍になります。毎月返済で元本が減っていくため、単利計算のように「2%×20年=40%」とはなりません。実際の負担はそれより小さく、1,000万円借りても20年後の総返済額は約1,214万円です。
一方、複利4.5%の米国20年国債は、20年で元利金が約2.41倍になります。単利の1.21倍と複利の2.41倍。この差は単なる金利差2.5%の話ではなく、「複利が時間とともに増え方を加速する」ことが本質です。
そこで“為替”の視点を入れるとさらにわかりやすくなります。
たとえば、1ドル=160円で米国債を購入したとします。20年後に元利金が2.41倍になれば、実質的な為替コストは「160円÷2.41=66.40円」になります。つまり、20年後に1ドル66.40円のドルを得たのと同じ効果になります。
これに対し、フラット35住宅ローンの総支払額は元本の1.21倍ですから、同じ基準で比較するために66.40円に1.21倍を掛けると「80.34円」になります。
ここで導かれる結論は非常にシンプルです。
20年後に1ドル=80.34円より円高にならなければ、米国国債への投資のほうが有利になる。
「20年後に1ドル80円台まで円高になると思いますか」
と聞かれれば、多くの投資に詳しくない方でも直感的に理解できるでしょう。
複利で増える米国国債は、時間の経過とともに為替コストを“薄める力”を持っています。一方、日本国債は額面金額に対して一定の利息を得て終わりです。だからこそ、同じ金利であったとしても、米国の複利と日本の単利とは別物と言ってよいほど違います。
●今の金利環境で超長期国債へ投資するなら
この比較は日本の金利が今後どう動くかを考えるうえでも重要です。米国の金利水準が妥当であれば、日本の金利にはまだ上昇余地があります。逆に、日本の金利水準が妥当であれば、米国の金利には低下余地が大きいとも言えます。
つまり、現在の日本国債は最近の利回り上昇で投資妙味が高まってきたのは事実ですが、それは「過去と比べれば魅力が出てきた」だけであり、米国との絶対比較では依然として差が大きいということです。
単利と複利の違いを理解し、為替と組み合わせて考えることで、20年後の景色はまったく違って見えてきます。現在、日米ともに期間20年以上の超長期国債の利回りは、投資を検討する価値がある高い水準にあります。しかし、すぐに大きく金利が低下していく環境でもありません。当面は高金利を享受しながら、将来、金利が低下して債券の値上がり益も期待できる局面を待つ。そんなスタンスで臨むのが、今の金利環境にふさわしい付き合い方だと考えます。

