株価暴落を前提に考える株式比率と、次の大きなチャンスをつかむための準備
近年の長期上昇相場の中で、大きな株価下落を経験していない個人投資家が増えています。積立投資やインデックス投資を続けてきた方の多くは、気づかないうちに運用資産全体の中でオルカンなど株式の割合が高まっています。「そのうち見直そう」と思いながらも、これまで大きな損失を被らずに済んできた経験が、株式比率の高さを放置する理由になっているのではないでしょうか。しかし、株価の暴落は忘れたころにやってきます。だからこそ、今の株式比率を見直すことは、増やしてきた資産を大きく損ねず、次の大きなリターンを得る機会をつかむための前向きな準備だと考えています。
株式投資は長期的に高いリターンをもたらす資産です。短期間で株価が数倍になることもあれば、逆に10分の1まで下落することもあります。私の知人には、200万円で投資した株式が数か月で20億円になり、その後、元の水準に戻ってしまった人もいます。
このように、株式投資には大きな値上がり益を得られるワクワク感があると同時に大きな下落を受け入れる覚悟も必要です。優良企業であっても、相場のムードで買われ過ぎれば高値から3分の1まで下落することは珍しくありません。
一方で、「つぶれるかもしれない」と大きく売られた企業が、財務基盤の強さや事業の底力が評価され、「つぶれないかもしれない」と市場の見方が変わることで株価が数倍になることもあります。暴落後の株式投資は、債券などのインカムゲイン商品では考えられない大きなリターンを享受できるチャンスがあります。したがって、「現在が高値圏にあり、暴落する時は来る」と考えるなら、暴落の前に株式比率を下げておくことが重要です。株式比率を下げることは弱気ではなく、次のチャンスをつかむための「攻めの準備」なのです。
積立投資は長期の資産形成に有効ですが、万能ではありません。現在積立投資している銘柄の水準が割高だと考えるなら、積立額を減らすという選択肢があります。また、積み立てた元本の一部を売却し、株式比率を下げることも合理的です。積立投資をやめる必要はなく、リスク量を調整するだけで暴落への耐性を高めることができます。積立は「常に正解」ではなく、相場環境に応じて量を調整することで、より安定した投資成果につながります。
暴落前提の投資戦略では、分散よりも「何を持つか」が重要になります。一般的に分散投資は有効ですが、暴落する局面では株式という資産クラス全体が下落するため、銘柄数を増やしても下落リスクの軽減効果は限定的です。暴落は企業にとっても試練であり、資金繰りに弱い企業や、実力以上に買われていた企業は市場から厳しい審判を受け破綻が心配されたりします。一方で、暴落前から確かな競争力を持ち、財務基盤が強固な企業は、危機で競争相手が減ることで市場シェアを拡大し、利益率を高めることがあります。これが残存者利益です。こうした企業は、暴落後に株価が5倍、10倍と大きく伸びる可能性を秘めています。
したがって、暴落前に避けるべき対象は二つあります。第一に、財務基盤が弱く暴落で破綻する可能性がある企業。第二に、相場のムードで実力以上に買われ過ぎている企業です。暴落前の投資対象の選別では、最低限、「破綻しない企業であること」を確認し、そのうえで「暴落後に残存者利益を得られる可能性があるか」を見極めることが重要です。
よくある相談として、「オルカンを続けていますが、TOPIXを加えて分散した方がよいですか」というものがあります。しかし、これは株式の中で銘柄を増やしているだけで、下落リスクの軽減の効果はほとんどありません。
真の分散とは、株式が大きく下落する局面でも価値が安定し、必要なときに現金化できる流動性の高い資産を持つことです。具体的には、1年間保有すれば政府が元本での買取を保証する個人向け国債、米ドル資産であれば米ドルMMF、1年以内にチャンスが来ると考えるならMRFが選択肢です。株式を売却した資金をこうした資産にシフトしておくことで、暴落時に冷静に追加投資を行う準備が整います。相場の転換が懸念される今こそ、次のチャンスを待つための資金の重要性が増しています。
まとめると、株式投資を否定するのではなく、次の大きな投資機会に備えるために、今こそ株式比率を見直すべき時期です。暴落は必ず来ます。そして、備えがある人だけがそのチャンスをつかむことができます。株価が下落基調に転じ、多くの方が株式投資に関心を失った時、破綻しない企業を選び、その中でも残存者利益を得る可能性のある企業を拾うことができれば、資産価値を大きく増やすことができます。そのためにも、「株式の資産価値が4割減ったら冷静でいられるか」「下落局面で追加投資の準備ができているか」と、現在の株式比率が適当かどうかを検討しておくことが大切です。

