私は外貨投資で長期投資を可能にするために一番大事なことは、意識して集中投資を避け、複数の通貨を同時に持つことだと思っています。そのため外貨投資を始める方には、米ドル・ユーロ・豪ドルを同時に持つことを常に提案してきましたし、今後もそのつもりです。それぐらい、通貨の先行きを予測して、有利な通貨を選択するのは難しいと経験で実感しているからです。
その私ですが、ユーロ円が147円を超えるユーロ高になり、ユーロの組み入れに迷いがありました。米国、日本の金利が頭打ち傾向で、ユーロの金利は上昇基調にあるため、相対比較でユーロが買われているというユーロ高に対する説明があります。「本当かあ?」と正直納得いきません。
米国政府によるドル資産凍結を恐れ、中東マネーがドル資産偏重からユーロ資産にバランスを取るようになった。M&Aの約定金額が米国よりも欧州のほうが多かった。欧州で不動産ブームが高まり、建設・不動産投資が高まっている。個人消費・設備投資熱が高まり、EU全体のGDP成長率は上方修正し、欧州中央銀行(ECB)はインフレの高まりを懸念し、政策金利を連続して引き上げている。こうしたいくつもの要因が重なって、ユーロ独歩高が加速されたと思います。つまり、ユーロが強くなるべき条件がいくつも重なった結果だと思います。だとすれば、さらなるユーロ高が進むには、これ以上の新たな要因が求められるわけです。
ユーロ高を予測する根拠は、内輪である欧州中央銀行(ECB)が政策金利の継続引き上げを示唆しているからですが、最近フランス・ドイツの財務高官が「輸出企業の収益を圧迫する」とこれ以上のユーロ高をけん制する動きが出始めています。ユーロ高で悲鳴が上がり始めたわけです。
こうしたユーロ高期待を先取りした動き、欧州内での悲鳴を背景に、昨年ドルがそうであったように、年末にかけてユーロ高が修正する場面を想定しておく必要があると思います。
だからユーロの割合を減らせというつもりはありません。そういう事態を想定することが大事だと考えます。今でもこのユーロ高は意外ですが、現実割高だと考えたユーロを組み入れたことが、ポートフォリオ全体の安定に貢献し、結果オーライとなりました。為替相場は理屈で動くわけではありません。複数通貨を同時に組み込む意味は、「何が良いか」という投資ではなく、「万一の事態に準備する」という保険です。ユーロ高の次の展開に備えて、ますます通貨分散は重要になると思います。