9月にも完全施行される金融商品取引法では、販売金融機関に顧客への投信のコスト説明が徹底されます。投信のコストとしては販売手数料、信託報酬などが挙げられますが、本日の日経朝刊記事では投信で取り扱う株式の売買回転率や売買委託手数料もコストの一部として説明させるかどうか議論されているとありました。
記事の中には、成長株を取り扱う投信は回転率が高く、割安株を取り扱うものは低い傾向があると紹介がありました。
個人的には「売買回転率や売買委託手数料の収益に対する割合は投信選びのモノサシですよ」と伝えることは大事だと思いますが、単純に「売買回転率の高いもの、売買手数料の多いもの」は悪い投信とレッテルを張ってしまうことがないように運用に注意が必要だと思います。
値動きの激しい投資対象であったり、割安割高のサヤを取る目的の投信であれば、当然収益を上げるためには売買の回数が増えて当然です。顧客から預かった投資資金を手入れもせず、放ったらかしにしていたら、たまたま銘柄が当たって成績がまずまずだった投信が良い投信に見えたりします。つまり売買回転率の高い投信は悪ということは、個別の投信の良さをはかるモノサシではなく、売買回転率を上げないと利益が上がらないような投信の仕組みにだめ出しをしていることになります。
性善説に立つことは無理なのでしょうか。良い投信であるにもかかわらず、売買回転率が高めの運用会社は「何故売買回転率が高いのか」、「それは改善余地があるのか」、「この投信の優秀さを理解してもらうために注目して欲しいこと」を自ら投資家に語ること。そして投信評価会社など投信の評価をするところは、その投資家に理解してもらいたいという運用会社の意図をくみ取って、運用会社の主張が的外れではないかを検証し、投資家が他の投信との比較が可能なモノサシとして同種類の投信との比較を知らしめ、投資家の感想を募って運用会社にフィードバックを行い、よりわかりやすい説明を求める。こうした運用会社と投資家の相互理解を深めて、投信を選ぶ目を養っていくのは絵空事なのでしょうか。
手数料が高いとか、売買回転率が高いとか、値動きが大きいとか、に注目しても、自分にあった投信を見つける目的の達成には何の助けにもなりません。「じゃー、どんな投信を選んだらいいの」という投資家の不満は募るばかりです。
答えは投資家の中にあります。「どんな目的で投資を考えているのですか」。これを窓口で相談が出来て、それに見合った投信の選択肢がもらえること。そして、その選択肢から自分にあった投信を判断し、決断するために必要な知識がもっとも必要です。その知識が「手数料が高い」とか、「売買回転率が高い」とか、「値動きが大きい」とかではないと私は思います。