以前ヘッジファンドと言えば、少数の投資家で大きな資金を取り扱えるように、極々一部の超富裕層やプロの投資家にしか声をかけませんでした。人の伝手や強力なコネがなければ、お金を持っていても仲間に入れてくれないところもありました。それが5000万円ぐらいの資金でもヘッジファンドを取り扱うようになり、最近では投資信託を通じて一般個人でも少額で買えるものも出てきました。ヘッジファンドを買いたくても買えなかった人にとってはチャンスですが、ヘッジファンドの理解が十分でない人にも無差別に案内されている状況は問題だと私は思っていました。ヘッジファンドの過去の実績は素晴らしいものがありますが、「何故その実績を残してきたか」という手法の理解は個人には内容が難しすぎて無理です。どんな市場環境でも利益を確保するという「絶対リターン」を標榜するヘッジファンド。我々の理解は「何故だか分からないけどもうかった」です。「株式は下がったけどうまくやったのかな」と理解するだけです。逆に、「何故だか分からないけど損をした」という結果も受け入れる覚悟が必要です。ヘッジファンドの多くは投資家に対し「このファンドは絶対的リターンを目指します。このファンドの投資はかなり高度な専門知識を持ち、リスクを認知した人に限ります」と注意を促しています。つまり、ヘッジファンドはもともとリスクを理解したプロ向けの金融商品です。
証券取引等監視委員会は9月から、内外のファンドを問わず、日本で募集するファンドは全て検査対象とし、投資家保護に反する行為があれば金融庁に行政処分を勧告する。6月のサミットでは具体的なヘッジファンドの規制は盛り込まれなかったが、米国ではヘッジファンドを対象に過度な情報開示が必要ないプロ同士がやり取りできる市場を創設する動きがあったり、情報開示を積極的に行う意志を示し株式会社として上場する大手のヘッジファンドが現れたり、今回のようにアマの投資家を保護する仕組みを整えたり、ヘッジファンド自らの情報開示を促し、ヘッジファンドもどきの淘汰をはかる実際の動きが始まったようです。
過度な規制で運用がやりにくくなり国外にヘッジファンドの資金が流出するという懸念がありますが、市場取引である株式や債券とは違い、取り扱う目利きによって価格が異なる不動産や未公開企業の売買が適正なルート、適正な価格で行われているかのチェックは個人ではできません。ここを疑ったら投資になりません。その後の成果は投資家の自己責任ですが、資産価格の妥当性の証明は運用会社の責任ですし、監督庁がチェックを入れるのは当然必要だと思います。
何故運用成績がよいのに、更に資金を集めようとするのでしょうか。新たな資金集めは既存の投資家にとっても好ましいことなのでしょうか。向こうから寄ってくるうまい話は、まずは疑ってみる必要があります。ヘッジファンドが個人の資金まで手を伸ばすのは、投資家ニーズに応えるため?、ヘッジファンドの存続のため?、それとも投資家、ヘッジファンド双方のため?わかりやすい説明をして、気持ちよく投資資金を募ってください。